2大メガバンクがトヨタ株売却へ…?日本株「持ち合い」終焉のウラで動き出す“黒船”
資本主義を歪めてしまう仕組み
こうした構造が阻害するもの、それは本来であれば働く筈の株主の経営そのものに対する監視や干渉の機能になる。大きく分ければ株主の権利は2つに大別される。それは剰余利益の分配を配当として受ける権利と、経営そのものに参加する権利だ。先ほども触れた通り、持ち合い構造は、後者をある意味機能不全にする。それはその構造がそもそも経営者を相互に護り合うための仕組みだからだ。 ただ、持ち合い構造の司令塔でもあるメインバンクが融資を背景に役員を送り込み、経営の暴走を許さない監視役として機能するなかで、日本経済は成長を遂げたとは言える。 しかし、キャッチアップすべきモデルを喪い、先頭に躍り出た段階で、過去を踏襲し、従業員共同体の長として利害関係者の調整を行うのに長けた経営者や内部の権力闘争に勝ち残っただけの経営トップでは、次のステージには行き着けないということが、明確になった、メインバンクも内部留保が事業会社に溜まっていくなかで、発言力を喪失していった、それがもしかしたら「失われた30年」だったのではないか、とも言える。 いつの間にか、複合化し、いつの間にか、内部留保だけがうずたかく積まれ、いつの間にか国際的な競争力まで失っていった日本、それは事業会社相互の持ち合い構造という資本主義の活力の源泉を歪めてしまう仕組みそのものの問題でもあったのだろう。 少し話が脱線するが、こうした「持ち合い構造」から連想するのは中国の上場企業ガバナンスの仕組みだったりする。中国の上場企業は、国有資産管理委員会が国有持株会社を挟んで殆どの企業に対し支配に足る株式を所有し、一方で共産党が細胞を幹部として送り込んで運営されていると聞く。この構造を笑うのは、戦後OECD加盟に伴い「持ち合い構造」を構築し、共産党からではないが、メインバンクから経営を監視する役員を送り込まれ運営されていた我が国を鑑みたとき、できないという気がする。