「遺体はすでに硬直し、足は曲がったままで…」秋田でクマに襲われ死亡した男性の「第一発見者」が明かす「恐怖の現場」
これまで3度クマに襲われた
スーパーKが縄張りにしていた熊取平とその周辺は、文字通りクマにとっては天国のような場所です。それは、地質と地形、そして日当たりの関係で、長期間山菜やタケノコなどが取れるからです。 あたりを縄張りとするクマにとっては、それほど移動しなくても身近に餌がある好条件の整った場所になります。ですから、結果として強い個体の縄張りになるわけです。入山禁止になってからは、人が入れませんからクマがタケノコや山菜を独占しているでしょう。次々と子グマが生まれて頭数が増え、生育範囲を広げているのです。 もともとこのあたりのクマは、人の姿を見るとすぐに逃げるような臆病な個体が多かったのです。クマの縄張りに入っても、繁殖期の子連れの母グマ以外、危険を感じたことはありません。 いまエラそうに言いましたが、これまで3度ほどクマに襲われたことはあります。足を噛まれたり、組みつかれて腕もやられたり…目の下を引っ掻かれたこともありました。それでも山に入ることを諦めたことはありません。クマにやられたこと…それは私の失態だからです。 彼らがサインを発しているのを無視して、「もっと採りたい」という自分の欲が、自ら設定したルールを破ったということなのですね。 テレビのニュースなどでも報道されていますが、想像以上に山の中は変化しています。
威嚇行動なしに突然向かってくる
タケノコの生える場所も時期も変化していますし、明らかにクマの頭数が増えて危険度が増しています。本来、クマは人間が縄張りに入ってきた際に、うなり声を出したり、木をバンバンと叩いたりするなどして、侵入してきた人間を威嚇してくるものです。 それがここ3年ほど、そのようなサインもなく、つまり威嚇行動なしに突然人間に向かってくる個体が増えてきたように感じています。 県内でもクマの出没する場所、目撃された場所が、看板などで張り出されるようになりましたが、報告された件数はごくわずかです。日常的に山に入る我々は日々遭遇しますので、報告などしません。 私らが入る山は、一般の人の入る山とは違います。道などありませんし、登山客などもいません。野生動物のテリトリーに入るという経験は、普通に生きていれば決してないのだと思います。 人の手が入った山林は、日差しも入り明るく、見晴らしもいいです。しかし、人の入らない山は全くの別物です。道がないということもありますが、人を寄せ付けないというか、人間を拒むような感覚があるのです。本来、我々が居住する場所ではないというか、あまり長く居座ったら祟りでもあるかのような感覚でしょうか。 そういう山に入るのですから、山への礼儀というものは人それぞれ心得て然るべきです。それを無視すると、手痛いしっぺ返しが来るというわけです。 私の知り合いの中にも「追いかけられた」「指を食いちぎられた」「荷物を投げてクマがそちらに行っている間に逃げた」などといった話は、よく聞きます。猪やカモシカなどの被害もありますが、いちばん恐ろしいのはやはりクマです。