弾劾可決で日本の外交戦略練り直し…韓国の対日政策「揺り戻し」に警戒、北が挑発強化の恐れも
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が弾劾(だんがい)訴追で職務停止に追い込まれたことで、日本は外交戦略の練り直しを迫られそうだ。尹氏と共に進めてきた日韓関係改善の流れが止まれば、トランプ次期米政権下での日米韓協力や、日中韓の枠組みを通じた中国との対話も停滞しかねない。ロシアの後ろ盾を得た北朝鮮が政治空白に乗じて挑発を強める恐れもある。 【動画】尹錫悦大統領の弾劾訴追案、韓国国会が可決…大統領の職務を停止
弾劾訴追案の可決に先立つ14日夕、石破首相は訪問先の福島県で記者団に「他国の内政にコメントは控える」としつつ、「日韓関係の重要性は何ら変わらない。(韓国情勢は)全く見通せないが、引き続き緊密に意思疎通しなければならない」と強調した。
来年の日韓国交正常化60周年に合わせ、首相は尹氏を国賓として招く案を水面下で検討していた。韓国大統領として約20年ぶりとなる国賓訪日を通じて関係強化を内外に印象づける考えだったが、実現は困難な情勢となった。
尹氏が罷免(ひめん)された場合、日本との関係強化に否定的な左派政権が誕生する可能性があり、政府は外交・安全保障政策の揺り戻しを警戒する。当面懸念されるのが対中戦略への影響だ。米国を軸とする日米韓の枠組みでは、北朝鮮だけでなく対中国を念頭に安全保障協力を深めてきた。来年1月に米大統領に就任するトランプ氏は多国間協力に消極的で、米軍駐留経費を巡り同盟国への圧力もちらつかせる。中谷防衛相は14日、沖縄県名護市で「地域の安全保障環境が厳しさを増す中、日韓、日米韓の連携がますます重要だ」と語ったが、韓国の政治情勢次第では日米韓の結束が正念場を迎えることになる。
一方、日韓は昨年、中国を交えた日中韓の対話を4年ぶりに本格再開し、中国との対話機運も高めてきた。日中韓の次回議長国の日本は、来年初めに3か国の外相会談を開き、春の首脳会談につなげる段取りを描いていたが、暗礁に乗り上げた。外務省幹部は、「当面は日中2国間の外交に注力し、外相の相互往来を目指す」と話す。
今回の戒厳令宣布を機に韓国軍も混乱に陥っているとされ、北朝鮮が即応態勢の乱れを突いて大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射などに踏み切る恐れも指摘されている。