「現実はそんなに甘くない」手越祐也が独立して気づいたアイドルという“魔法”
獰猛なライオンから、革命家のうさぎへ
――ポジティブなイメージの手越さんですが、落ち込むことはありますか。 手越祐也: ありますよ、全然(笑)。事務所をやめて記者会見した後なんか、誤解や憶測をもとにバッシングされて、めちゃめちゃへこんでいました。前いたグループが本当に好きだったのに“裏切り者”呼ばわりされたのが悔しかったし、精神的にもきつかった。だから当時は毎晩、気心の知れた仲間と一緒にいて、情けない話なんですが、ずっと泣いていました。まあでも、事務所時代も思いどおりにいかなくて、悔し泣きすることは多かったかもしれません。 ところが独立後は、同じ泣くのでも“悔し泣き”から“うれし泣き”に変わりました。僕の誕生日の(ネット)生配信で、友人2人がサプライズで来てくれて、ワインを一緒に飲んで、そのときメッセージをもらって、感激のあまり号泣。生身の僕についてきてくれる人たち、そばにいてくれる人たち。その友情や愛情に素直に感動しちゃうんです。だから同じ涙でも、ポジティブな涙。こうして一緒に過ごせる人たちがいる。そのしあわせったらないですよ。今は前を向いて、わくわくしながら生きています。 ――手越さんはアイドルからアーティストに脱皮しようとしているように見えます。アイドルとアーティストの違いはなんですか。 手越祐也: この言い方が正しいかわかりませんけど、歌やダンス、トークがある程度平均的にできて、ファンに恋愛感情を抱かせる“魔法”をかけることができるのがアイドル。音楽やパフォーマンスを通じて、人を感動させたり、人の人生観を支えるのがアーティストじゃないかと思います。かつての自分を振り返ってみると、最もアイドル向きだったと思いますし、“ザ・アイドル”を演じていたつもりですが、アイドルに対するリスペクトに変わりはありません。しかし今の僕は、歌うことを活動の中心にしていて、それが心の底から楽しいと思えるんですね。自分自身、2年前とは変わったと思いますし、成長して変わっていかなきゃならない。そうやって変化した自分が、まわりを変えていけたらいいと願っています。そんな僕の歌を聞いてもらって、元気になったなと思ってもらえると最高ですね。 ――今年の干支はうさぎ。手越さんは年男(としおとこ)になりますね。 手越祐也: 意外に思われるかもしれませんが、事務所時代の僕はメラメラとしていて、ライオンみたいに獰猛な感じでした。同じ会社だとファミリーと見られますけど、中は中で熾烈な競争はあるからライバルは多かったし、「自分のいるグループを一番輝かせなきゃいけない」と気を張っていたんです。 動物にたとえるのは難しいけど、僕がめざしているのは“革命家のうさぎ”かな(笑)。一人っ子でさみしがり屋なのはうさぎの性格。革命というのは、もしも僕が成功したら、芸能界の今までのルールや流れが変えられる可能性があると思うからです。 僕は今、たったひとり。以前のような“魔法”も使えない。なんだかんだ言っても居心地のいい場所を捨ててしまったわけだから、もう前を向くしかない。退路を断ったわけだから、振り返って戻れない。未練はもう捨てました。だとしたら、今できることを、まわりの人を大事にしながらやるしかない。ひとりひとりのファンに感謝しつつ、その数を増やしていくのが課題といえますが、どこまでできるかわからないけれど、持ち前のポジティブパワーで乗り切っていくつもりです。 ===== 手越祐也(テゴシ・ユウヤ) アーティスト。1987年神奈川県出身。15歳でジャニーズ事務所に入所し、2003年9月のデビューから2020年6月独立までの約17年間男性アイドルグループのメンバーとして活動。フリー転身後は、自身のTwitter、Instagram、YouTubeチャンネルなどのSNSを開設。2021年7月からは6ヶ月連続新曲配信などアーティストとして精力的に活動。今年3月15日にライブBlu-ray&DVD「手越祐也 LIVE TOUR 2022 Music Connect」発売、4月5日セカンドフルアルバム発売、4月12日から「手越祐也 LIVE TOUR 2023」東京、仙台、名古屋、大阪、横浜にて5都市10公演を開催する。