「女だからできねぇよ」講談師・七代目一龍斎貞鏡(38)4人の子どもの妊娠報告のたびに「何やってるんですか」と言われ涙した過去も
■講談師は「女だからできねぇよ」 ── お父さんは、女性が講談師になることに反対していたそうですね。 貞鏡さん:今でこそ女性の講談師が過半数を占めていますが、それまで女性の講談師はほとんどいらっしゃらなくて。いらしても辞めてしまったり、続かなかったりした方が多いそうです。祖父の時代には「女が講談をできるはずがない、講談の世界に入門してもどうせ結婚して辞めてしまう、腰掛けだ」と言われたことがあるという方の話も聞きました。父の時代にもまだその風潮は根強く残っていまして、父も女性が講談師になることには反対でした。
女性の入門希望者が父のところに何人も来ていたのですが、「女だからできねぇよ」と断っていたんです。ところがそんな父のもとに16年前、娘の私がひょっこり入門したことで「今までと言っていることが違うじゃないか」と周りから言われたことも今では笑い話になっていますけど、講談の世界は女性の先輩方のお力もあり、この30年でガラッと変わりました。 ── 女性であることで、苦労した経験はありますか。 貞鏡さん:講談の世界には見習い、前座、二ツ目、真打という身分階級があり、見習いと前座修業中は、先生方が高座に集中していただけるよう楽屋で身の回りのお手伝いをさせていただきます。大御所の先生の世代は男性が多いので、われわれ下っ端の若い女性が着物に着替えようとしたときに、「タバコ吸ってくる」とか「飲み物買ってくる」とおっしゃって、先生が楽屋を出ていかれたことがありました。相手が女性だからと先生方に気をつかわせてしまうこと、動いていただいてしまうことは心苦しく、そこで自分が存在を消してトイレの中やカーテンの後ろでササッと着替えるなどして、前座のころは3分で着物に着替える術を身につけました。
── 4人のお子さんを出産されていますが、産休に入る際や復帰はスムーズでしたか。 貞鏡さん:どの仕事をされている方もそうだと思うのですが、子どもは授かり物と言われるだけあって、いつ授かれるかわかりません。でも、私たちの世界では1年先の予定が入っていることもありますので、妊娠によってその予定を動かしていただかなくてはならなくなります。 今ではそうしたことも考慮し、公演日の半年前に正式にご依頼をお約束するようにしているのですが、今から7年前に長男を妊娠した際に、「このたび妊娠いたしまして、4月が出産予定となりました。3月の予定をせっかく押さえいただいていたのですが…大変申し訳ございません」とお断りを入れたんです。そのとき関係者の方から言われたのが、「は?何やっているんですか?」「困りますね。復帰するつもりはあるんですか、もう戻ってこられないんでしょう」という言葉でした。
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