ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ攻撃が気候危機に大きなインパクト 紛争開始18カ月でベルギーのGHG排出量を超えたウクライナ侵攻
ガザ攻撃で確認されたGHGのほとんどがイスラエルから
一方、昨年10月から始まったのが、イスラエルのガザ攻撃だ。戦争開始後60日間のGHG排出量は両軍合わせて28万1,000tCO2e。このうち99%以上がイスラエルによるもの。今年初め、英国・米国の研究者が戦争の最初の60日間に排出されたGHGについて分析し、発表した報告書『A Multitemporal Snapshot of Greenhouse Gas Emissions from the Israel-Gaza Conflict』で明らかになった。 イスラエルは、日にF-16やF-35といった戦闘機300機を使い、計1万個もの爆弾で空爆を、300台の戦車や200台の歩兵戦闘車、10万ものミサイル発射装置を用い、地上戦を行った。米国はボーイング777-200もしくは同様の飛行機を使い、200回以上にわたって、1万tもの物資をイスラエルに届けている。米軍のGHG排出量は13万3,000tCO2e。イスラエルからの全排出量の半分近くを占める。 この戦争に付随するサプライチェーンは含まれていないが、含めた場合、排出量は28万1,000tCO2eの5~8倍にも膨れ上がると見られている。ちなみに、ハマスがイスラエルに向け、発射したロケット弾の排出量は約713tCO2eに過ぎなかった。
ガザでも建物の再建、インフラの再整備が最も気候危機に影響
今回の報告書では、「戦争開始後60日間」と「2002年からのイスラエルによる分離壁建設・2007年からのハマスによる地下トンネルの掘削」によるGHG排出量、「イスラエルによって破壊されたパレスチナの建物・インフラの再建」による排出量予測と3種類のGHG排出量を提示した。 ウクライナ同様、GHGを最も多く排出しているとされるのが、再建だ。ガザでイスラエルにより破壊された建物は全体の36%から45%。建て直しで、3,000万tCO2eのGHG排出が見込まれる。これはニュージーランドの年間GHG排出量に匹敵。建設は戦争から出るGHGの中でも、地球温暖に最も深刻な影響を与える要因といっても間違いなさそうだ。