太田格之進アメリカへ……将来的な目標はインディ500やル・マン参戦「”コイツ速いな”と思われるようになれるかが鍵」
2025年にIMSAに参戦することが決まった太田格之進は、「世界に認められるようなドライバーになりたい」と抱負を語った。海外レースに挑むことについては、以前から意識していたのだという。 【ギャラリー】太田格之進、IMSA挑戦! アキュラARX-06を駆る 12月10日にホンダ/HRCが2025年の四輪モータースポーツ参戦体制を発表。その中で太田が、2025年にデイトナ24時間レースを含む、IMSAの3レースに挑むことが明らかにされた。太田がドライブするのは、HRCのセミワークス体制となるメイヤー・シャンク・レーシングの93号車アキュラARX-06で、デイトナではアレックス・パロウらとシートをシェアする予定だ。既にテストドライブも済ませており、着々と準備を進めている。 「まず、マシンすごくデカいです。ハイブリッドも初めてですし、今まで乗ってきたマシン以上に、電子制御やテクノロジーが進んでいるなと思いました」 ARX-06の印象について、そう語った。 「ステアリングのボタンで、数えられないくらいの組み合わせの操作ができます。何千通り、何万通りの操作が多分あると思います。それを使いこなすのも大変です」 「またストレートは今まで乗ったクルマの中で一番速いです。ストレートだと、330km/hくらい出ています。そしてタイヤでグリップを発揮しているわけではないという部分は、スーパーGTとは違いますね。スーパーGTはスペシャルタイヤを使っているわけですから」 「そして、このクルマはダウンフォースに頼って走っている感じなので、低速コーナーと高速コーナーのグリップの違いが大きいです。どれくらいプッシュできるかというのをリアルタイムで上手く感じ取りながら走らせるのは、難しいかなと思っています」 会見の冒頭で太田は、来年のIMSA参戦をきっかけに、”世界に認められるドライバー”になることを目指したいという。具体的には、どんな目標を思い描いているのか? そう尋ねると、太田はこう語った。 「シンプルに、世界三大レースの中で現実的なのは、今こうやってアメリカのチャンスをもらえたのでインディ500もそうですし、ル・マン24時間は同じクルマですし、自分自身の努力とか結果次第では、そういうチャンスはあると思います」 そう太田は言うが、自らの”師匠”でもあるというHRCの佐藤琢磨エクゼクティブ・アドバイザーと同じように、インディ500参戦を目指したいという想いが強いようだ。 「特にインディ500に関しては、HRCのプロジェクトというだけじゃなくて、ひとりのドライバーとして『コイツ速いな』とか、『コイツ使えるな』と思われるかどうかだと思います」 「スポーツカーのレースって、メーカーと契約して参戦するという体系だと思います。でもインディカーって、自分の速さを常にアピールしていくことで、チーム側からオファーが来るような展開に持っていけると思います。そうすれば、交渉する場合にも有利な状況で話ができると思います」 「だからそこに関しては、自分も参戦したいという意思表示をこれからもずっとしていくつもりです。クルマが一緒なので、ル・マンもいつかは出たいと思います。ただ、そのあたりはまだどうなるか分かりません」 なお太田は以前motorsport.comのインタビューに答えた際、「海外でレースをしたいということについては、何か特別な理由があったかと言われるとそこまでではなくて……」と語っていたこともあった。それでも、「世界で認められるようなドライバーになりたい」と今回は語っていた。 そういう想いが変わった瞬間があったのか? そう尋ねると、太田は次のよに語った。 「タイミングですかね。僕は結構現実を見る部分もあるので。現実的じゃないところから、いきなり世界世界と言っていても、何を言ってるんだ? ということになりますし」 「元々、初めから世界を意識していたわけではないってことです。でも言わないと始まらないですし、行きたいということはアピールし続けていました。特に、ある段階からは思っていたんです」 「(角田)裕毅が僕の1年前にFIA F4に乗って、そして彼はヨーロッパに行った。でも僕がFIA F4に乗ったそのタイミング(2020年)でコロナ禍になってしました。タイミング的に難しくなっていく中で、じゃあ現実的にどうなるか……とりあえず国内でしっかり結果を出すしかないよねということになりました。でも、心の奥底には、海外に行きたいという想いはずっとありました」 「コロナ禍も終わって(2023年の最終戦で)SFで優勝したことで、来年結果を出せば可能性があるんじゃないかということが現実的になってきました」 また太田は以前、エンターテインメント性が強いところも、アメリカに惹かれた部分のひとつだと語っていた。それについても細かく尋ねてみた。 「僕はそっち系なんですよ!」 ”そっち系”とはどっち系? ビックリして尋ねると、太田は次のように続けた。 「やるんだったら、盛り上げてやろうよというタイプなんです。今のスーパーフォーミュラは、そういうことをどんどんやろうとしてます。もちろんレースを観にきて欲しいんですが、やっぱり多くの人が来てくれた方がいいですし、そういう人が(サーキットを)何か違うことで楽しんでくれることでもっと盛り上がれば、ドライバーとしては楽しいじゃないですか」 「日本は国民性なのか、シャイな感じもあります。でも海外に行くともっとオープン……アメリカは特にそうじゃないですか。インディ500なんて、みんな朝からビール呑んで……。そういうの、僕は好きなんですよ」 「みんなで楽しむっていうのは、大事だと思います。そういうエンターテインメント性の強いところ、アメリカならではの文化っていうのを、楽しみにしてます」
田中 健一