潘基文国連事務総長の「国連は中立ではない」発言は妥当なのか
中国・北京で行われた「抗日戦勝70周年記念」の式典と軍事パレードに参加した潘基文国連事務総長の発言が波紋を呼んでいる。式典・軍事パレード参加への批判に対して、潘基文氏は、「国連と国連事務総長が、中立(neutral)であるという誤解がある。むしろ、国連は公平・不偏(impartial)な団体だ」と反論した。「国連が中立ではない」とはどういうことなのか。 実は、「国連は中立ではなく、公平・不偏である」という考え方自体は、国連が平和維持活動(PKO)を行う際の国連の公式見解として用いられている。しかし、その考え方を今回、潘基文氏が自身の立場の弁護のために用いたことは妥当と言えるのだろうか。
「国連が中立であるという誤解がある」と潘基文氏
9月3日、潘基文国連事務総長は、日本政府の事前の懸念伝達にも関わらず、中国・北京の天安門広場で開催された「抗日戦勝70周年」の記念式典と軍事パレードに参加した。これに対して、菅義偉官房長官は4日、「190カ国以上が加盟する国連は中立であるべき」で「潘基文氏が軍事パレードに参観したことは極めて残念」と批判した。 菅氏の批判に対して、潘基文氏は4日の中国国営テレビ(CCTV)のインタビューで「一部に、国連事務総長や国連組織が中立(neutral)であるという誤解があるようだ。むしろ、国連は公平・不偏な団体(impartial body)である」と述べた上で、「もしひどく間違ったことを見たら、私はそれを批判し、正さなくてはならない。その点において、私は事務総長としての責任を果たす際、公平・不偏(impartial)になりうる。それが私の考える、私の仕事に求められるものだ」と反論した。 潘基文氏の反論に対して、菅官房長官は「国連が中立、公正公平なのはあたりまえのこと。言葉遊びをしているようにすら感じる」と批判。安倍晋三首相も、11日の参議院・平和安全特別委員会で「国連は中立であるべきで」「潘基文氏が中国の式典に出席し、軍事パレードに参加したことは極めて残念」「今後国連が特定の立場や主張に偏ることが無いよう、しかるべく働きかけを行う」と述べた。