給料から引かれる「社会保険料」が急に高くなりました。年収はあまり変わっていないのですが、なぜでしょうか?
9月を過ぎると、給与明細を確認したときに以前よりも厚生年金保険料や健康保険料が多く引かれているケースがあります。年収が大きく変わっていなくても高くなっている場合がありますが、これは保険料の改定時期が要因のひとつでしょう。 残業を多くした時期によっては、年収に大きな差がなくても社会保険料が高くなることがあるため注意が必要です。今回は、社会保険料が高くなる理由や実際にどれくらい変わるかなどについてご紹介します。 ▼65歳から70歳まで「月8万円」をアルバイトで稼ぐと、年金はどれだけ増える?
社会保険料が高くなる理由
年収が大きく変わっていないのに社会保険料が高くなったときは、社会保険料の評価基準である4~6月にかけての収入が多かった可能性があります。社会保険料は、4~6月の「標準報酬月額」を基に決められるためです。 日本年金機構によると、標準報酬月額とは、会社などから受け取っている給料を一定の幅で区分した「報酬月額」に当てはめて決められる金額をいいます。厚生年金保険の場合、区分は1~32等級に分かれており、最小金額は8万8000円、最大65万円です。なお、健康保険の標準報酬月額は組合や都道府県によって異なる可能性があります。 標準報酬月額は、4~6月の報酬月額を基準にして毎年9月に改定される仕組みです。そのため、4~6月に残業が多いといった理由で収入が増えた場合は、年間を通しての収入があまり変わっていなくても9月から社会保険料は高くなるケースがあります。
給料が変わると社会保険料はどれくらい変わる?
今回は、以下の条件で社会保険料がいくら変わるのか比較しましょう。 ・東京都在住40代 ・健康保険料と介護保険料は全国健康保険協会の金額 ・賞与は考慮しない ・4~6月以外の収入は月収20万円で一定 ■4~6月の収入が月収20万円のとき 月収19万5000円以上21万円未満のときの標準報酬月額は20万円になります。条件を基にしたときの各種社会保険料は以下の通りです。 ・健康保険料と介護保険料:月額1万1580円 ・厚生年金保険料:月額1万8300円 ・雇用保険料:月額1200円 社会保険料を合計すると、月額3万1080円です。年間を通しての月収は変わらないため、社会保険料の年額は「3万1080円×12ヶ月」で37万2960円になります。 ■4~6月の収入が月収22万円のとき 月収21万円以上23万円未満の標準報酬月額は22万円になります。この場合、社会保険料は以下の通りです。 ・健康保険料と介護保険料:月額1万2738円 ・厚生年金保険料:月額2万130円 ・雇用保険料:月額1320円 雇用保険料以外は、大幅に収入が変わることがなければ1年間は9月の改定で決まった金額です。今回のケースでは、雇用保険料以外は1~8月までは月収20万円の金額、9~12月は改定により月収22万円のときの金額となります。 1~8月までの健康保険料と介護保険料および厚生年金保険料は合計で月額2万9880円、8ヶ月で23万9040円です。改定後の9~12月は月額3万2868円、4ヶ月で13万1472円になります。合計すると、年間で37万512円です。 なお、雇用保険料は毎月計算されるので、4~6月以外の9ヶ月間は月収20万円の月額1200円、4~6月の3ヶ月間は月収22万円の月額1320円で計算します。1年間の雇用保険料は合計1万4760円です。 社会保険料を合算すると、年額38万5272円になります。年間を通して月収20万円だったときと比べると、1万2312円の差です。
4~6月の収入に応じて9月からの社会保険料が改定される
社会保険料は、4~6月の収入を基にして毎年9月に改定されています。そのため、年収は大きく変わっていなくても、4~6月に残業が多いと社会保険料も高くなるでしょう。 例えば普段の月収が20万円で、4~6月の間だけ月収22万円になると、今回の試算では、年間を通して月収20万円のときよりも社会保険料が年間1万2312円高くなります。少しでも社会保険料をおさえたい場合は、4~6月に残業しすぎないようにしましょう。 出典 日本年金機構 厚生年金保険の保険料 執筆者:FINANCIAL FIELD編集部 ファイナンシャルプランナー 監修:高橋庸夫 ファイナンシャル・プランナー
ファイナンシャルフィールド編集部