「関鯨丸」下関港帰港、大型ナガスクジラ30頭捕獲したが…解体に肉体的負担・鯨肉流通網が脆弱などの課題
世界で唯一の捕鯨母船「関鯨丸」(9299トン)が17日、5月に母港・下関港(山口県下関市)を出港後、北海道・東北沖での操業を終え初めて下関に帰港した。2019年の商業捕鯨再開後、今年から捕獲対象に加わった大型のナガスクジラも30頭捕獲した。一方、ナガスの発見や解体に時間を要することが浮き彫りになったほか、日本の捕鯨を巡っては鯨肉流通網の脆弱さや、消費者の需要喚起といった課題もある。(今泉遼、平木和頼) 【写真】関鯨丸の船尾にある「スリップウェー」から船内に引き揚げられるナガスクジラ
1か月の航海6回繰り返し…生産量1546t
「63トン(1頭)のナガスを揚げられたので自信につながった」。午前9時過ぎに着岸した関鯨丸から下船した「共同船舶」(東京)の恒川雅臣・船団長(51)は、報道陣の取材にこう話した。
捕鯨母船は小型の捕鯨船と船団を組み、小型船が捕まえた鯨を積み込んで解体し、冷凍する役割を持つ。関鯨丸は老朽化した先代の「日新丸」の後継として、今年3月に完成した新造船だ。出港後、北上し日本の排他的経済水域(EEZ)内で操業を始めた。
仙台港(宮城県)に寄港しながら、1か月程度の航海を6回繰り返し、ナガス30頭、イワシクジラ25頭、ニタリクジラ175頭を捕獲した。鯨肉の生産量は計1546トンに上る。
関鯨丸は今後、鯨肉が入ったコンテナを降ろし、下関港に係船。来年2月頃から山口県下松市のドックでメンテナンスを受ける。4月頃に操業開始予定だ。
政府は商業捕鯨再開後、捕獲対象をニタリなどの3鯨種に限ってきたが、今年7月により大型のナガスを追加。日本の商業捕鯨として約50年ぶりにナガスを捕れるようになった。
ナガスクジラを探すのに時間
漁を通じて課題も見えてきた。恒川船団長はナガスについて、大型のため解体する乗組員の肉体的な負担が大きかったり、長く捕獲していなかった鯨種なので分布状況がつかみにくく、探すのに時間がかかったりしたとの事情を説明した。
また、水産庁によると、近年の国内の鯨肉消費量はピーク時の100分の1以下の2000トン程度だ。日本の伝統的な食文化を継承していくには、消費者の需要喚起が大事だ、との指摘が根強くある。