日本人が知らない「目の日焼け」が引き起こす病気の怖さ 専門医は「若者が思っているほど軽いことではない」
夏が近づき、しみなどの原因となる紫外線(UV)が気になりだす季節。肌は紫外線対策が必要なことはよく知られているが、実は、目への紫外線の影響、いわゆる「目の日焼け」も眼病のリスクであることはあまり知られていない。専門家は予防の重要性と「屋外スポーツをしている子どものケア」が特に必要だと訴える。 【閲覧注意】「目の日焼け」で病気になった眼球はこちら * * * 赤道直下のアフリカ・タンザニア。日本から1万1000キロ以上離れた熱帯の国で、2014年、金沢医科大学眼科学講座の佐々木洋・主任教授らが現地調査を行った。佐々木氏は「目の日焼け」の研究を続けており、紫外線が日本の2倍ほどあるタンザニアでは目にどのような影響があるかを調べたところ、興味深い結果が出た。 一般的に、アフリカ人は視力がいい、などと言われるが、現地の小中、高校生ら子どもたちの視力を調べると、93%が裸眼で1.0以上だった。さらに近視の割合は、金沢医大のある石川県の子どもと比較すると13分の1しかいなかったという。 ここまでは“俗説”を裏付けるような結果だったが、その他の疾患の調査では、「目の日焼け」が将来的な眼病のリスクとなる可能性を示唆する結果が出たというのだ。 佐々木さんによると、そもそも紫外線による目の疾患は急性と慢性のものがあるが、急性の場合は時間がたてば治癒するため、さほど心配しなくていい。
■若くして老眼や白内障のリスク 一方で慢性化のリスクがある疾患は、 ▽瞼裂斑(けんれつはん・白目の一部にシミのようなものができる) ▽翼状片(よくじょうへん・白目が黒目の方に伸びてきて乱視などを引き起こす) ▽老眼(目のピント機能が低下し近くが見えにくくなる) ▽白内障(目の水晶体が濁って視力が低下する) という4つが主だという。 タンザニアの子どもは視力はいいものの、小学校1年生で大半が初期の「瞼裂斑」にかかっていた。石川県の小学生では極めて少ない。 さらに、タンザニアでは40歳を過ぎると、視力が下がる人が目立った。目がいいのは子ども時代だけという傾向が見られた。 「翼状片」についても、タンザニアでは50歳以上でこの疾患にかかっている人が46%もいたのに対し、石川県は7%と大きな差があった。 「日本国内でも、紫外線が強い沖縄県の西表島に住む50歳以上を調査したところ、島の出身者では46%が翼状片にかかっていたという結果が出ています」(佐々木さん) 世界の各都市を比較しても、赤道に近い地域と紫外線の弱い地域では、「翼状片」の罹患率の差が顕著だったという。 白内障の一歩手前の症状が老眼だが、その老眼の調査も同様の結果だった。 「日本では45歳くらいから老眼になる人が出始めますが、タンザニアでは30代後半から目立ち始めました。別の調査と比較すると、紫外線量の少ないアイスランドでは50代からという結果が出ています。つまり、子どものころから強い紫外線を目に浴び続けると、若くして老眼や白内障などになってしまうリスクがあるということです。子どものころの瞼裂斑は、その兆候だと考えられます」(佐々木さん)