樋口恵子 私がヨタヘロの身でイベントに足を運び続ける理由とは。たいした仕事はできずとも、これから先を生きる方に「頑張ってくれ~!」とエールを送りたい
◆老いの不安も安心も本音で話し合う 12月には、「高齢社会をよくする女性の会」の年末恒例「討ち入りシンポ」に出席しました。今回のテーマは「介護保険は老後を支える命綱 みんなで守り改悪阻止を!」。コーディネーター、講師の話を一言も聞き漏らすまいと、会場のみなさんも真剣そのものでした。 第1部のシンポジウム後の質疑応答では、シングルできょうだいがいない60代の女性が、「将来が不安だったので、なにか道が見つかるかもしれないと思って今日の会に来てみました」と発言。そうした不安を共有し、次の段階として、安心を共有する。それが、この会の目的だと思っています。 この日のためにわざわざ新潟から上京してこられたベテラン会員は、ご自身が歳を重ね、要介護になったからこそ感じたことや地方の状況について語ってくださいました。 30年、40年もの間、一緒に高齢者問題への関心を持ち続け、世の中をしっかりと見渡し、遠くから足を運んでくださる。その気持ちに触れ、思わずウルッとしそうでした。
◆助け合える社会を目指し頑張っている人に拍手を 第2部は、2022年から始まった樋口恵子賞の第2回授賞式。壇上で「ヨタヘロぶりをみなさまにお見せして、同情を買おうとしております」と挨拶したところ、会場からどっと笑いが起きました。 今回は54件の応募があり、選考委員の検討を経て4団体が受賞。ささやかな賞金を贈りました。空き家を利用して多世代が幸せに暮らせるよう、広島県尾道市で活動する「一般社団法人 UME(ゆめ)プロジェクト」、東京都世田谷区で「おひとりさま」の孤立を防ぐイベントを開催する「砧むら おばちゃん会議」、排泄の悩みをサポートする「NPO法人 日本コンチネンス協会」、利用者本位の介護サービスの実現のために活動する「NPO法人 介護保険市民オンブズマン機構大阪」。 いずれもユニークで、地に足がついた活動です。 世の中には、この社会を少しでも住みやすくするため、善意の活動をしている人たちがたくさんいます。そういう方々が、お互いにささやかな市民であることを認識し合い、認め合おうじゃないか。助け合いのできる社会にするため、他人のファインプレーに「やったね!」と拍手する。そんな気持ちで始まったのが樋口恵子賞です。 なにせヨタヘロの身ですから、たいした仕事はできません。でも、これから先を生きる方を元気づけるため、「頑張ってくれ~!」とエールを送ることはできます。残された人生、それが私の使命であり、生きがいにもなっています。 (構成=篠藤ゆり)
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