50歳で仕事に意義を感じなくなる…?多くの人が直面する「仕事の価値観」の大変化
何より大きいのは経済的な事情
定年後の就業者に話を聞いていると、体調面での変化を語る人も少なくない。目の調子が悪くなりパソコンの画面を凝視することがつらくなったと話していた畠中さんの事例や、生活習慣病や難聴の問題を抱える佐藤さんの事例など、歳を経るごとに何かしらの持病がある人は確実に増える傾向にある。 もちろん、年齢が高いから仕事に支障が生じるのではないかというような、年齢による差別は許されるものではない。しかし、定年後も働き続ける人が増えるなかで、加齢に伴って仕事に関する能力に変化が生じることは、誰しも現実として起こり得る。 定年後に身近にある小さな仕事に価値を感じるようになる背景には、加齢による自身の変化や、定年によってもたらされる仕事の環境変化なども影響としてあるが、何よりも経済的な環境変化が大きい。多くの人は60歳にもなれば、日々必要とされる生活費の大きな変化を経験する。これまで必要であった子供のための多額の教育費負担から解放され、住宅費に関しては自宅の維持費用があれば十分というケースも多くなる。 そして、60歳半ばになると公的年金給付を得られる。定年後にこのような経済的な裏づけがあるからこそ、大きな仕事でなくても十分にやっていけるのである。 「それは逃げ切り世代だから通用することだ」「今後はそう簡単にはいかない」――こうした主張を行う人もいるだろうが、その指摘は実は誤りである。 確かに今後の日本の社会情勢を鑑みれば、年金の受け取り開始時期や受け取り額などの受給条件はますます厳しくなっていくことが予想される。しかし、現在のシニア世代は、男性が働き女性は家庭を守るというライフスタイルが主流であった世代である。夫婦二人世帯を仮定すれば、小さな仕事であっても、働き続けてさえいれば、ダブルインカムで経済的には十分にやっていける。また、単身世帯の場合であっても、高齢期に稼ぐべき額はやはりそこまで多くない。 だから、現在においても、未来においても、定年後のキャリアは小さな仕事を楽しむ姿こそが典型であり続けるはずなのである。