なぜ「情熱大陸」登場のボクシング界の“ホープ“堤駿斗は東京五輪代表に選ばれなかったのか?
新型コロナウイルスの世界的拡大で、東京五輪の開催の行方が不透明となっている中で、日本ボクシング連盟は20日、都内で強化委員会を開き、五輪の日本代表選手を決定、フライ級の田中亮明(中京学院大中京高教員)、ライト級の成松大介(自衛隊体育学校)、ミドル級の森脇唯人(自衛隊体育学校)の3人を開催枠で選出したことを発表した。 日本は開催枠として男子4枠、女子2枠を割り当てられていたが、先の五輪アジア・オセアニア予選で、女子フライ級の並木月海(自衛隊体育学校)、女子フェザー級の入江聖奈(日体大)、男子ウェルター級の岡澤セオン(鹿児島県体育協会)の3人が代表権を獲得したために開催枠から差し引いた残りの男子3枠が、この日の会議で決定したもの。注目は、予選の初戦で敗れたフェザー級の堤駿斗(東洋大)の合否だったが、惜しくも選から漏れた。まだ五輪出場の可能性は消えてはいないが、5月にパリで開催される予定だった世界最終予選が新型コロナウイルスの影響で中止となり、いつどこで行われるかも未定。東京五輪のホープと称されたボクサーは、なぜ選から漏れ、崖っぷちに追い込まれたのか。
明確な選考基準により判断
予定時間を40分オーバーして代表発表会場に入場した6人の代表選手の中に堤の姿はなかった。WBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者の“モンスター”井上尚弥(大橋)とスパーリング経験があり、「距離感覚が素晴らしい」と、絶賛された天才的な距離感覚を持ったボクサーとして、習志野高時代に6冠。高校2年時に出場した世界ユースで日本人として初の金メダルを獲得し、東京五輪のホープとして注目された。 先日、TBS系の人気番組「情熱大陸」に取り上げられたほどのスター性を持つ20歳のボクサーである。だが、その堤が、男子3枠の開催枠で選ばれることはなかった。 連盟の強化委員長の本博国氏は、この日行われた強化委員会での選考経緯をこう説明した。 「こういう決定(強化委員会による選出)の仕方は本当に心苦しくて、選手が自力で枠を取ってくれればよかったが、こういう手段を取らざるを得なかった。派遣前に選手選考の基準をもうけていた。これをこのまま引用したような選考の仕方になっている」 退陣した”ドン”山根明氏が会長を務めていた、これまでの組織での代表選考には透明性がなかった。新体制となった連盟は、それらの反省を踏まえ、初めて与えられることになった五輪開催枠の代表選考基準を公明正大に決めて事前に発表していた。 昨年11月に実施された全日本選手権の各階級の優勝者を代表候補とし、彼らを対象に連盟が定めた選出基準は2つ。 ひとつ目は、アジア・オセアニア予選で最上位に進出した選手を最優先。ふたつ目は、過去の国際大会の実績で、男子は、2017年8月の世界選手権(ドイツ)、2018年8月のアジア大会(インドネシア)、2019年4月のアジア選手権(タイ)、2019年9月の世界選手権(ロシア)の4大会の成績、内容が、その対象となっている。 今回、男子の代表候補は、フライ級の田中、フェザー級の堤、ライト級の成松、ウェルター級の岡澤、ミドル級の森脇、ライトヘビー級の梅村錬(拓殖大学)の6人で、彼らはヨルダンで行われたアジア・オセアニア予選に出場したが、ここで出場権を取れたのは、岡澤一人。残りの5人の中から開催枠の3人を選ぶことになった。