シリア政権崩壊、大統領はロシア亡命-「暴力と混乱」警戒の声相次ぐ
(ブルームバーグ): シリアのアサド政権が崩壊した。ここ数日に驚異的なペースで進軍し、領土を制圧してきた反体制派が首都ダマスカスにも進攻した。
シリア国営放送は8日朝、「偉大なシリア革命の勝利と犯罪的なアサド体制の崩壊」を発表。その後でロシア外務省はアサド大統領が辞任すると決定し、シリアから出国したと声明で明らかにした。
ロシア国営タス通信によると、アサド氏とその家族はモスクワに到着。アサド氏一家はロシアへの亡命が認められたという。ロシア大統領府当局者を引用してタスが8日に報じた。
シリアを長期にわたり支配してきたアサド政権の崩壊は、中東全体に衝撃を与えている。同国の主要支援国であるロシアとイランにとっては大きな打撃となりそうだ。
イスラエルは8日朝、ゴラン高原の市民らを守るためシリア付近の緩衝地帯に軍を配備したと発表。その後、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が匿名のイスラエル当局者2人を引用して伝えたところによると、イスラエル軍の地上部隊は週末にシリアとの国境の非武装地帯を通過し、1973年の第4次中東戦争以来初めてシリア領内に入った。
バイデン米大統領は8日、 アサド政権崩壊でシリアと中東全体に「歴史的な好機」が訪れたと歓迎した上で、「リスクと不確実性の瞬間でもある」と指摘。過激派組織「イスラム国」(IS)が空白を利用しようとする事実をわれわれは冷静に認識し、それを許さないと表明した。
イスラエルのネタニヤフ首相はアサド政権崩壊について、パレスチナ自治区ガザで拘束されている人質を解放する取引が前進する可能性があると、人質家族との会合で語った。
反体制派を主導する武装組織「シリア解放機構(HTS)」は、7日夜にダマスカスに進攻するとともに、ほぼ同時期に同市から北に約160キロ離れた要衝ホムスを制圧したと発表した。また、北部のトルコとの国境近隣地域や南部なども別の反体制組織が掌握した。