シリア政権崩壊、大統領はロシア亡命-「暴力と混乱」警戒の声相次ぐ
複数の報道では、ダマスカスの市民はアサド政権の崩壊を祝っている。
HTS指導者のジャウラニ氏は、首都に駐留する全シリア政府軍に武装解除を呼び掛けるとともに、正式な政権移譲までジャラリ首相が職務にとどまると述べた。
ジャウラニ氏は中東の衛星テレビ、アルアラビーヤに対し、アサド氏の所在は分からないと語っていた。内戦を追跡調査する非政府組織(NGO)のシリア人権監視団によると、同氏はダマスカスから航空機で外国に逃れた。
アサド大統領(59)は2000年に父から最高権力者の地位を引き継いだ。ブルームバーグは7日、同氏が権力を維持しようと、米国とトランプ次期大統領への間接的な外交提案を含む土壇場の取り組みを行ったと報道。さらに、政府軍に対してダマスカスへの退却を命じ、反体制派にホムスを含む領土の大半を事実上明け渡すことも認めていたという。
トランプ氏はソーシャルメディアで、米国はシリア情勢に「一切関与すべきではない」と明言し、「これは我々の戦いではない。成り行きに任せよう。関与してはならない!」と主張。その後の投稿で、アサド氏は出国し、ロシアは「もはや同氏を守ることに関心がない」と指摘した。
来月で退任となるバイデン政権は介入する意思をほとんど示しておらず、米国はHTSの攻勢とは何の関係もないとの主張を繰り返している。
米国および、シリアと国境を接するイスラエルは、警戒しつつ事態を見守っている。両国にとってアサド氏は協力関係になく、米国はアサド政権に対して厳しい制裁を科している。一方、HTSは米国など西側諸国からテロ組織の指定を受けている。
ドイツのベーアボック外相は声明で、「シリアが今、どのような外見であれ、他の過激派の手に落ちてはならない」と警告。フランスは「包括的な政治的解決策を通じてシリア人が和解と再建への道を見つけられるよう、最大限の支援」をパートナー諸国に呼びかけた。
リスクコンサルティング会社RANEによると、さまざまなグループが自らの立場の強化を試みているため、シリアの政治情勢は流動的な状態が続きそうだ。