スミソニアン国立アジア美術館が「Japan in Focus」シリーズを始動。日本文化の体験プログラムも
北米で最大のアジア美術コレクションを有するスミソニアン国立アジア美術館が、今秋から日本の美術と文化への理解を深める展覧会シリーズ「Japan in Focus」とパブリックプログラムをスタートする。 同館は「日本美術の冒険者」と呼ばれる実業家でコレクターのチャールズ・ラング・フリーアが寄贈した約9500点の美術品をもとに1923年に設立された美術館。コレクションの拡張によって、アジア美術の所蔵点数は現時点で4万7000点に上り、そのうちの約1万5000点は日本の絵画や陶芸、仏教絵画、金属工芸、彫刻などが占めている。 昨年開館100年を迎え、2世紀目に突入した同館は、設立当初からの礎である日本美術の常設コレクションを再構築。「Japan in Focus」は、そのコレクションの初公開を皮切りに2026年後半まで継続的に開催される。
「Japan in Focus」は、5つの展示を軸に日本美術のそれぞれの分野における制作方法をひもといていく。現代日本の金属細工技法と伝統的な手法の融合にフォーカスする「際立つ形:現代日本の金属細工」(~2026年1月11日)や、ケネス&キヨ・ヒッチ・ コレクションおよびゲルハルト・プルヴェラー・コレクションの作品を通して日本の創作版画運動の発展を紹介する「版画の世代」(2024年11月16日~2025年4月27日)など、リサーチやキュレーション、学術といった同館の強みを活かす展示内容になっている。5つめの展覧会「カット+ペースト」では、20世紀の日本のアーティストに焦点が当てられ、美術館の紙作品コレクションから30点以上の版画や写真を展示する。
また、年間を通じて開催される一連のパブリックプログラムは、日本への洞察を深めると同時にアメリカとの関係性理解を促す試みでもあるという。中には、茶の湯に生涯を捧げ、同館の理事でもあったグレゴリー・キンゼイ寄贈の茶道具を使用した茶の湯や、伝統的な日本工芸の学びと制作、抹茶を楽しめるワークショップなども予定されており、座学のみならず触覚、味覚、嗅覚などを通して日本文化を体験できるプログラムが目白押しだ。 館長のチェイス・F・ロビンソンは、今回の発表で「2世紀目を迎えるにあたり、私たちは日本美術を通じて来館者とのつながりを築く新たな機会を創出し、より強度のある日本美術の展覧会やパブリックプログラムの継続に尽力していきます」とコメントしている。
ARTnews JAPAN