現在63歳、年金は「月15万円」の予定ですが、70歳から受け取ると「21万円」に増えると聞きました。ただ早くに死亡すると「損」になってしまいますよね? 家族に「遺族年金」として、いくらか支払われるのでしょうか…?
人生100年時代といわれるようになり、65歳以降も働く人が増えています。政府も年金の繰り下げ受給を推進しており、最大で75歳まで繰り下げられるようになりました。 老齢年金の繰り下げ受給には、最大で84%も老齢年金を増やせるメリットがありますが、受給前に亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか。 本記事では、万一繰り下げ受給の待機期間中に亡くなってしまった場合、もらえるはずだった年金がどうなるのかについて解説します。 ▼夫婦2人の老後、「生活費」はいくら必要? 年金額の平均をもとに必要な貯蓄額も解説
年金は繰り下げ受給で増える
会社員として厚生年金保険料を納めていた人が老齢年金を受け取るときは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた金額を受け取れます。65歳の誕生日の前日に受給権が発生し、翌月から受給開始します。 65歳よりも先延ばしで老齢年金を受け取ることを「繰り下げ受給」といい、1ヶ月繰り下げるごとに0.7%受給額がアップします。2024年4月現在、75歳まで繰り下げ受給が可能なため、最大で84%老齢年金がアップします。 また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、老齢基礎年金を65歳から受給し、老齢厚生年金は70歳まで繰り下げるなど、別々に繰り下げることも可能です。65歳から月15万円受け取る予定だった老齢年金を繰り下げた場合、受給額は次のとおりです。 ・70歳まで5年間繰り下げ→受給額月21万3000円 ・75歳まで10年間繰り下げ→受給額月27万6000円 月15万円の老齢年金では、それだけで生活するには心もとないですが、20万円以上受け取れると考えると心強いですね。
受け取り前に亡くなってしまったら?
一方で、70歳や75歳まで年金受給を繰り下げても、もし年金を受け取る前に亡くなってしまったら繰り下げ損になってしまうのでは……と心配する声も聞かれます。 本項では、老齢年金を繰り下げて待機期間中、年金受給前に亡くなってしまった場合の対応について解説します。 ■未支給年金として遺族が受け取れる 繰り下げた老齢年金を受給前に亡くなってしまった場合は、「未支給年金」として、遺族が受け取れます。 例えば70歳まで繰り下げ予定だった夫が、68歳3ヶ月で亡くなってしまった場合は、65歳から68歳3ヶ月までの3年4ヶ月分の年金を妻が請求できます。ただし、「未支給年金」として受け取れる金額は、繰り下げ受給前の金額で計算されます。 また、5年以上前の年金は時効が成立し、請求の対象外となってしまいます。例えば、75歳まで繰り下げ予定で待機中だった夫が73歳6ヶ月で亡くなってしまった場合は、65歳0ヶ月から68歳6ヶ月までの年金については請求できず、68歳7ヶ月から73歳6ヶ月の5年間分のみが請求対象となります。 ■受け取れる未支給年金の額は 65歳から月15万円の老齢年金を受給予定だった人が、70歳まで繰り下げた場合は、本来は月21万3000円受け取れます。しかし、繰り下げ受給の待機期間中に亡くなってしまった場合、遺族が受け取れるのは繰り下げ前の年金額である月15万円です。 先の例のように、68歳3ヶ月で亡くなってしまった場合を考えると、遺族が受け取れる金額は次のとおりです。なお、未支給年金は一括で支給されます。 月15万円×3年4ヶ月分(40ヶ月)=600万円 70歳以降に亡くなった場合は直近5年間分までの請求となるため、このケースでは受け取れる未支給年金額は最大で900万円となります。
まとめ
万一、繰り下げた老齢年金の受給前に亡くなってしまったら、遺族が「未支給年金」として、本人が受け取れなかった年金を受け取れます。そのため、繰り下げた年金すべてが損になってしまうことはありません。ただし、この場合は65歳から受け取る予定だった金額をもとに計算した受給額となります。 また、5年間よりも前の年金については、時効となり請求できなくなってしまうことに注意が必要です。繰り下げ受給のメリット・デメリットの両方を理解してセカンドライフについて考えましょう。 出典 日本年金機構 年金の繰下げ受給 執筆者:古澤綾 FP2級
ファイナンシャルフィールド編集部