66歳で離婚、夫の墓に入りたくない。檀家としての務めも大きな負担に。100万円払って2基を合祀、娘や息子にも感謝され
墓じまいを手掛けている業者に問い合わせたところ、お墓が斜面にあり、寒冷地で基礎の石が分厚い場合、撤去費用が余分にかかることがあると言われた。墓じまいを経験した叔母に聞くと、300万円かかったという。 そんな余裕はないと気が重くなる一方だったが、70歳を目前に、子どものためにも元気なうちにすませなければと決意を新たに。住職とは話しづらいので、行政書士に一任することにした。 「インターネットでお墓に近い町の行政書士さんを探して。コロナ禍でしたので、直接会わず、すべてメールでやりとりしました。コロナは、住職と会わない言い訳になり、正直助かりましたよ」 2基分のお骨は、町営霊園の合祀墓に移動。その霊園も、阿部さんがネットで見つけたという。司法書士には撤去中の写真や更地になった後の写真なども、メールで送ってもらった。
費用は、墓じまいを手掛けている葬儀社への支払い、お寺へ払う魂抜き料、役所での手続き、合祀墓に納めるための料金、行政書士への謝礼など、一切合切含めて2基分で100万円弱。 「大きな出費でしたが、やるべきことはやったし、これで嫁ぎ先との縁が完全に切れると思うと、心が解放された気分になりました」 すべて終わったのは、最初に行政書士に問い合わせのメールを送ってから2年後。思い立ってから5年の間にお寺の事情も変わったようだ。納骨堂が完成したことで、墓じまいをして納骨堂に入れる檀家が急増したらしい。 3人の子どもたちには、画像を添付して完了したことを連絡。長女からは「一時代が終わったって感じだね」、次女からは「行動を起こしてくれてとてもありがたい。おつかれさまでした」と返信があった。 「末っ子の長男は『へぇ、驚いた。了解~』(笑)。田舎の因習だと、たとえ私が離婚しても、本来、息子がお墓を守らなくてはいけないわけです。でも今の若い人は、長男とか、跡継ぎといった意識はないんでしょうね」
篠藤ゆり