【インタビュー】平野ルナ選手~反対されても決めたST600参戦。その道は世界の舞台につながっていた~
こうしたなか、初めて参戦する海外の選手権で、平野選手は徐々に周囲との関係性を築き、体制を整えてもいました。 今回のレースウイークでは、マヌさんの友人が駆け付けてメカニックは2人体制となり、また、台湾のリウ・チュン・メイ選手(WT Racing Team Taiwan)のチームの日本語が話せる女性がグリッドで傘持ちをしてくれたり、ブリーフィングで手助けをしてもらったそうです。 ST600や鈴鹿8耐への参戦、そして今回のWCR参戦など、平野選手はいつも、大きくて高い壁に向かって、力いっぱいチャレンジしていこうとしているようです。けれど、実際に話していると、平野選手は不思議なくらいに「自然体」なのです。その背景に、大きな苦労や厳しい状況があったとしても。 「端から見ると、すごいものに挑戦し続けている感じですけど、そこに道があるから『行こう』という感じなのですね」と尋ねると、平野選手は「はい」とうなずきました。 「チャレンジ! って感じじゃないですね。バイクに乗っているのが好きなので、なんとか続けたいな、と思っていたら続いています」 「けっこう大変でしたけどね……ホテルの手配とか、初めて全部自分でやるので。SBKのパスの申請もすごく時間がかかっちゃった。英語が全くできないので、『どうすればいいんだ!』って」 そう言って、平野選手は笑います。「走り続けたい」という、レーシングライダーとしての純粋で真摯な、そして強い思い。その「走りたい」という思いが、平野選手をWCRに導いたひとつなのかもしれません。
「わたしの仕事は日本の女性ライダーに世界を目指すことが可能だと示すこと」
ここまでのほとんどは、「女性レーシングライダー」ではなく「レーシングライダー平野ルナ選手」に質問をしてきました。しかしここで、日本人として唯一、WCRを走るレーシングライダーに、あえて「男女混走の選手権でキャリアを積んできて、女性レーシングライダーとしての苦しさなどはありましたか?」と聞きました。それは、WCRに参戦するライダーである平野選手が、この選手権をどうとらえているのか、というアンサーにもなると考えたからです。