【インタビュー】平野ルナ選手~反対されても決めたST600参戦。その道は世界の舞台につながっていた~
「2023年度で、私が5年間所属していた鈴鹿8耐のチーム(TransMap Racing)が解散になったんです。そのためST600の参戦を続けるか、バイク関連の企業に就職するか、と決断を迫られました。全日本でもチームを探しましたが、今、日本の2輪レース業界ではメカニック不足が本当に深刻なんです。メカニックがいないのに、ライダーはどんどん増えている、という状況です」 「そんなとき、WCRの話がありました。WCRは日本向けに全く情報がなかったのでエントリーするのもすごく大変だったんですけど、レースをやめるくらいなら最後にチャレンジしてみよう、と思いました。世界を走ってみたい、という思いはありましたが、(参戦しようと思ったのは)“女性ライダーの”世界選手権だから、というわけではないですね」 「(タイミングが)ちょうどよかった、というのが本音です。チームが白紙になって、どうしようと悩んでいた時にこの選手権の話があったので」と、平野選手は言います。情報が無い中、伝手をたどって懸命に詳細を集め、エントリーシートにたどり着いたのは、締め切りの1週間前だったそうです。 今回の参戦は、平野選手単身でのエントリーのため、航空券やホテルといった手配を始めとする手続きの全てを、平野選手が行なっています。 「飛行機やレンタカー、ホテルの手配など、全て自分で行なっています。レースでは、レギュレーションでお手伝いやメカニックが1人から3人は必ず必要なんですが、そこがすごく難関でした。なかなか見つからなかったところ、関口太郎さん(レーシングライダー)が探してくださったんです。それが、メカニックのマヌさんです。それで無事に土台ができました」 マシンはヤマハが一括管理しており、タイヤやブレーキパッドの交換は、全ライダー同時に行ないます。ただ、タイヤ交換などの作業自体は、各チームのメカニックが作業する、という形です。基本的にほぼイコールコンディションのマシンですが、もしレバーやステップなどを交換したい場合は自分でパーツを用意してマヌさんに作業してもらうことになります。その「変更する」という判断も、平野選手の場合は、自分で行なわなければなりません。平野選手は、ライダーであるとともに、監督、チーフメカニックなどを同時に担って参戦している、と言えるでしょう。