“悪癖”で外出禁止「遅刻の常習犯」 エースは怒り…「病気レベル」の苦悩
一人暮らしになって解消された寝坊癖「気の張り方を知ったんだと」
高校までは、その“症状”に気付いていなかった。「実家だったんで起こしてくれたし、遠征とかも1人部屋とかがほぼなかったんでね」。プロ入りして初めて合宿所暮らしを経験してわかったわけだ。「6年目、7年目くらいまで治らなかったです。後輩ができたら起こしてもらっていましたが、遅刻の常習犯でした。キャンプでは10時練習開始で10時に起きたことがあったし、マーティ(・ブラウン監督)の時にバッティング練習の最後頃に球場に行ったこともあった」。 その件で広島のエース・黒田博樹投手に怒られたこともあったという。「和を乱すのをすごく嫌う方ですからね。僕が寝坊して申し訳ないような顔をしていたら、ちょっとはにかんだような形になってしまって『歯を見せてんじゃないよ!』ってパッと言われて……。勘違いなんですけど、よくよく考えたら笑顔で入ってきたように見えた自分がいけないと思いました。口を閉じていればそんなことはなかったんですからね」。 天谷氏は今でもバツが悪そうに「時代が時代だったら、もういないですよね」と話す。「(寝坊癖は)合宿を出て一人暮らしをしてから克服できました。『環境を変えます』と言ってから、1回も寝坊していないです。一人暮らしで寝坊したら、もうやばかったですからね。たぶん気が張っていたんでしょうね……」。誰も起こしてくれない状況に追い込む“逆療法”が成功したようだ。 「今は“トゥル”って音だけで目が覚めますんで、気の張り方を知ったんだと思います」と笑顔で話すが、当時はかなり大変だった。「僕は酒を全く飲まないんですが、先輩(野手)の井生(崇光)さんには『野球以外で怒られないように頑張れ、野球以外で怒られて評価を下げるな』ってずっと言われていました」。天谷氏は、そんな“闘い”も繰り広げながら1軍で活躍する選手になっていった。
山口真司 / Shinji Yamaguchi