栗山英樹流~ビジネスに生きる世界一の組織活性術
企業から講演依頼も続々~「信じきる」ことで能力を引き出す
東京・大手町では三菱地所グループの企業セミナーに。控え室で一心不乱に行っていたのは、主催する企業から頼まれたサイン。「夢は正夢」は選手時代からの座右の銘だという。 栗山は選手との向き合い方を例に、リーダーの心得を話した。 「不安になってくると、選手にはもう少し頑張ってほしいのに、人間関係をつくりたいがために『いい感じだな、頑張れよ』と言ってしまう。これは最悪です。そのたったひと言で『俺は頑張っているからいいんだ』と安心材料になってしまう。それぐらいトップの言葉は大きい」 こうした企業からの講演依頼もひっきりなしに。その一方で、オリンピック選手のコーチ陣を育成するJOCナショナルコーチアカデミーの講師を務めるなど、リーダー栗山の手腕が求められている。 これまで栗山は自身の考えを多くの著書の中に記してきた。論語などの古典や経営者の言葉をヒントに時間をかけて練り上げてきたものだ。 この日の企業セミナー「NTT DOCOMO VENTURES DAY2023」のテーマは「組織作り」。 「僕がジャパンの監督になってチームが世界一になるためにどうするか考えた時に、選手に伝えたいことがひとつだけあって、全員に手紙を書きました」 その手紙の一部を特別に見せてもらった。そこには「あなたの姿こそが日本野球そのものです」と記されていた。 「『あなたは侍ジャパンの一員なんです』ということではなく、『あなた自身が侍ジャパンなんです』と。皆さんとこれからともに仕事をしようとする社員全員が『俺の会社なんだ』『俺のチームなんだ』と思った時に、勝ち切れるのではないか」 話を聞いたビジネスマンは「チームワークの作り方やモチベーションの上げ方など、我々もそういったマインドで仕事に向き合わないといけないと感じました」と述べていた。 世界一の監督にはなったが、野球のエリート街道を歩いてきたわけではない。ドラフトにはかからず、プロの道はヤクルトのテスト生から始まった。1軍と2軍を行ったり来たりしながら7年間くらいついたが、1990年、29歳にしてユニフォームを脱いだ。