失明リスクも…コンタクトレンズが引き起こす合併症から目を守る
国内における「コンタクトレンズ(CL)」の装用人口は約1500万人とされ、日本人の10人に1人が使用している計算になる。近年はCLのインターネット販売の普及により医師の処方箋なしに自己判断で購入している人も少なくない。しかし、目の充血、痛み、ゴロゴロ感を覚えながらも使い続けているなら、使用法を見直すべき。さまざまな合併症を引き起こして失明の恐れがあるからだ。 目を水道水で洗ってもいい?カルキで殺菌されてはいるが… 松田眼科医院(新潟市)の松田英伸院長はこう話す。 「使い捨ての手軽さから、日本ではCL装用者のうち約8割以上がソフトコンタクトレンズ(SCL)を使用しています。CLによる目の不調を訴える人は年々増加傾向にあります」 SCLは、レンズに含まれる水分量によって種類が異なる。含水率50%未満は「低含水レンズ」、50%以上のものを「高含水レンズ」と言い、後者は含水量が多いためにフィット感が高く眼球への馴染みが良いメリットがある。ただ、レンズの水分量を維持するために涙液が吸収され、眼球が乾燥する「ドライアイ」を引き起こす。 目の中に花粉やほこりなどのアレルゲンが侵入しても、通常であれば涙液によって洗い流される。 ところがドライアイの状態では、涙液が不足して目の中にアレルゲンが長くとどまりやすく、「アレルギー性結膜炎」を併発して、目ヤニやかゆみ、充血に悩まされる人は少なくないという。 「さらに、CLの装用を続けて眼球に刺激が加わり続けると、重症化して上まぶたの裏にポツポツとした直径1ミリ以上の隆起物(乳頭)ができる『巨大乳頭性結膜炎』に移行するリスクが高い。異物感や目ヤニの増加のほか、乳頭が邪魔をしてレンズが頻繁にずれたり、乳頭と角膜がこすれて角膜に傷がつき、角膜を損傷したりする恐れがあります」 角膜は、黒目を覆う透明の薄い膜で、5つの層でできている。最も表層にある角膜上皮は、涙液を安定させたり、眼内への細菌の侵入を防ぐバリアーの役割を担っているが、ドライアイや角膜への刺激で角膜上皮が傷つきやすい状態になると、「角膜上皮障害」を引き起こす。 さらに角膜上皮の欠損が広範囲に及んだ場合には「角膜びらん」と呼ばれ、どちらも充血や眼痛、異物感のほか、びらんでは脈打つような激しい眼痛、涙が止まらなくなる流涙を伴い、QOL(生活の質)を大きく低下させる要因になる。 ■3カ月~半年に1回は定期検診を ほかに、とりわけ注意したい合併症が「感染症」だ。 「最も避けたい目の合併症に『感染性角膜炎』が挙げられます。これは角膜欠損部から緑膿菌などの細菌や真菌(カビ)、アカントアメーバなどの微生物が侵入して角膜に炎症を来す疾患で、日頃からCLを外さないまま眠ったり、CLの使用期間を守らない、汚れた手指でCLに触れるといった不適切な使用習慣が発症のトリガーになります」 日本眼感染症学会の主導による感染性角膜炎全国サーベイランス(2006年)の調査によると、感染性角膜炎の発症ピークは20~30代と60代で、感染性角膜炎と診断された患者のうち約42%はCL装用者であることが分かった。 「感染性角膜炎が起こると激しい眼痛、異物感、まぶしさのほか、本来、透明であるはずの角膜が白く混濁して、視力が低下します。さらに重症化すると、角膜に穴が開いて眼球の形が保たれなくなる『角膜穿孔』を引き起こし、眼球の内部にまで感染が進展すると『眼内炎』という状態になり、最悪の場合失明に至るケースもあるのです」 合併症を防ぐには、何よりもCLの清潔が欠かせない。CLに触れる際は必ず手指を洗い、1日使い捨てタイプ以外のものは、専用のケア用品を用いて毎日必ずこすり洗いする。指定された使用期間以上の装用は避け、レンズケースは3カ月~1年に1回は買い替えること。長時間利用は目を乾燥させて負担がかかりやすい。1日の装用時間はできるだけ短時間に控える。 「CLの合併症では、症状をかなり放置してから受診される方も少なくありません。3カ月~半年に1回は定期検診を受け、目に違和感があるなら放置せずに早めに医療機関を受診してください」