なぜ遠藤航は欧州で「世界のトップボランチ」と評されるのか? 国際コーチ会議が示した納得の見解<RS of the Year 2023>
チームメートを躍動させ、チームを支える存在
「自分が真ん中にどっしり立って、自分の前のスペースに顔を出してきた選手に対してプレッシャーをかけにいくところは意識していたし、それがハマったシーンが何回かあった。無理だったら割り切ってしっかりブロックを引いて守るみたいなところはやれていたと思います」 これは昨季ハンブルガーSVとの1部残留をかけた入れ替え戦の時の遠藤の談話だ。運動量が豊富でどこにでも顔を出すイメージもあるが、いつ、どこで、誰に、どのようにアタックするかを冷静に見極め、行ける時には一気に襲いかかる。ブンデスリーガで1対1での勝率が高いのはやはりこのあたりに理由がある。 そして遠藤はボール奪取後のプレー判断にも長けている。ボールを取って終わりではない。スペースがあればそのままスピードとアグレッシブさを落とすことなく、相手に阻止されることなく、ゴール方向へと一気に運んでいく。ディサルボが話を続ける。 「さっきと逆の話になりますね。前に出てこようとするところを抑えきれずに別のベクトルへボールを運べる選手がいると、守備組織を整理し直すのが難しい。なぜ優れたボランチをチームの心臓部と表現するのか。ボールを奪い取った後、ダイレクトへゴール方向にスピーディに、かつダイナミックに運べる選手というのは、チームのクオリティを2倍にも3倍にも高めてくれるからです」 トップレベルの選手が持つクオリティとして、ディサルボとヴォルフは「どれだけのプレッシャーがかかる状況でも解決策を見つけ出せるインテリジェンスとスキル」「自身のクオリティを最大限チームのために発揮する意志とタスク」「攻守において決定的な場面で決定的なプレーを実践」の3点を挙げていた。攻撃的な選手や攻撃的なアクションにばかり注目が集まりがちだが、こうした要素は守備における局面やフィフティフィフティの状況でも当てはまることばかりだ。 遠藤がシュツットガルトで3季連続キャプテンを務めたのには確かな理由がある。そして今回リバープールのユルゲン・クロップ監督が遠藤獲得に乗り出したのにも明確な意図がある。チームメートを躍動させ、チームを支える存在として、リバープールでも日本代表でも、今後の活躍に期待が集まる。 <了>
文=中野吉之伴