なぜ遠藤航は欧州で「世界のトップボランチ」と評されるのか? 国際コーチ会議が示した納得の見解<RS of the Year 2023>
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、ラグビーワールドカップ、サッカー・FIFA女子ワールドカップ、世界陸上、バスケットボール・FIBAワールドカップ……数々の世界大会が開催され、多くのアスリートの活躍に心揺さぶられる1年となった2023年。一方で、小野伸二さん、石川佳純さん、岩渕真奈さんなど、長く第一線で競技を背負ってきたレジェンド選手たちが現役引退を決意したことも印象的な一年となった。そこで、結果や勝敗だけではないスポーツの本質的な価値や魅力を伝えてきた『REAL SPORTS』において、2023年特に反響の多かった記事を振り返っていきたい。今回は、イングランドを代表する名門中の名門リバプールへの移籍を実現させた遠藤航選手の、欧州の指導者たちが認める“すごさ”についての記事だ。 (2023年8月22日公開) =================================
遠藤航のプレミアリーグ屈指の名門リバプール移籍が実現。モハメド・サラー、フィルジル・ファン・ダイク、トレント・アレクサンダー=アーノルドら豪華メンバーの一員として、憧れの地イングランドでさっそくリーグ戦デビューを飾った遠藤航。5シーズンにわたってプレーしたドイツ・ブンデスリーガでは、シュツットガルトで3季連続キャプテンを務め、2季連続でリーグ最多デュエル数の“デュエル王”にも輝いた。日本代表の主将も務める遠藤航の、欧州の指導者たちが認めるすごさとは? 国際コーチ会議が遠藤を「世界のトップボランチ」と評価する理由を改めてひも解く。 (文=中野吉之伴、写真=AP/アフロ)
度重なるグループリーグ敗退にドイツ連盟サイドの見解は…
世界トップレベルの大会で結果を残すために必要なクオリティとは何か。 2023年7月、ドイツサッカー連盟とドイツプロコーチ連盟とで共催される国際コーチ会議では、昨冬行われたFIFAワールドカップ・カタール大会の分析のプレゼンがあった。壇上に上がったのはドイツU-21監督アントニオ・ディサルボとU-20監督ハネス・ヴォルフ。 ドイツ代表の2大会連続グループリーグ敗退に加え、U-21欧州選手権でもグループリーグで散るという結果を受けて、連盟サイドがどのような見解を述べるのかと、会場に詰め掛けた参加者は注目していた。この国際コーチ会議の参加者はドイツ公認A級およびプロコーチライセンス(S級相当)の指導者約1000人。みなそれなりの知見と経験を持った人たちだ。 「カタールワールドカップは過去大会と比べて特別な状況で開催された大会だったのは間違いない。ほとんどない準備期間、普段とは違う開催時期。それだけにオフェンスとディフェンスのバランスをどのように見出し、そしてそれぞれの国が持つ個々のクオリティをどのようにチームへ取り入れようとしたのかが差となって表れたのではないだろうか」 ディサルボが指摘するように、チームとしての意思疎通が的確にとられ、守備バランスを崩さない戦い方を重要視する国が多かったのは確かだ。それ以上のことを浸透させるための時間がほとんどないのだから、攻撃的なプレー戦術の幅と精度にはある程度目をつぶらざるをえない。 だからこそ相手に対応されたときに、それを突破・攻略・対処する個々の能力とアイデア、ゲームインテリジェンスが適切に発揮されたかどうかが、試合の行方を左右する大きなカギとなった。