急増するビットコインの大口取引、野村のレーザーDが見た世界の激戦区──「マーケットの本格化はこれからだ」【2025年始特集】
ステーブルコインの崩壊と隆盛
2021年当時、暗号資産のグローバル市場全体の1日当たりの取引量は3,000億~4,000億ドル(約33兆~34兆円)に達し、当時としては史上最高額を記録した。まさに「クリプト・サマー」と呼ばれるほどに活況だった。 2024年12月初旬、欧米が年末の休暇シーズンに入る直前の取引高は、一時的に5000億ドルを超え、中旬頃には1500億ドル~3500億ドルのレンジに落ち着いた。 遡って2022年5月、当時の「夏の時代」は終わりを迎えようとしていた。 「テラ・ショック」と呼ばれる事態が勃発したのだ。テラ(Terra)は、韓国のテラフォーム・ラボが開発した米ドルに連動(ペッグ)するステーブルコインのエコシステムで、1トークン=1ドルの価値を維持するためにアルゴリズムと、テラが独自に発行していた暗号資産「LUNA」が使われた。 テラのステーブルコイン「UST」のペッグが崩壊し、LUNAトークンの供給量は急増。トークンの価値がほぼゼロに暴落する事態が起きた。連鎖的な崩壊により、投資家の損失は数十億ドル規模に膨れ、暗号資産市場全体を揺さぶった。 加えて、2022年後半から始まった本格化した「暗号資産・冬の時代」は、その年の11月に起きた「FTXショック」で、その冬の気温を一気に下げることになる。 サム・バンクマン-フリード氏が設立した世界最大級の暗号資産取引所「FTX」は、財務上の不透明性が暴露され、関連企業のアラメダ・リサーチとの間で資金の不正利用が疑われたことから流動性危機に陥り、事業の運営が破綻した。FTXは同月に米国連邦破産法第11章、いわゆる「チャプター11」の適用を申請した。 結局、テラが開発したアルゴリズム型ステーブルコインの構造的な脆弱性が露わとなり、規制の議論が活発化するきっかけとなる。同時に、担保型ステーブルコインの隆盛が強まっていく。 現時点で、全てのステーブルコインの時価総額は12月25日現在、約2030億ドル(約32兆円)。そのうちの70%を占めるのがテザー・ホールディングスが発行する「USDT」で、米サークル・インターネット・グループが発行する「USDC」は2番目に大きく約20%のシェアをとっている。 どちらも米ドルに連動するステーブルコインで、担保型ステーブルコインに区分される。1ステーブルコイン=1ドルの価値を維持するために、両社ともにリザーブファンドを作り、その中で現金の米ドルや短期国債などを中心に積み上げている。