「釜石でラグビーW杯」の夢をかなえた宝来館女将 台風19号にも「物語はこれから始まる」
台風19号で試合が中止に…
釜石で行われた予選プールD組のフィジー対ウルグアイの試合は、集まったおよそ1万4000人の観客にとって、まさに「一生の思い出」になるような熱戦となった。 そして、ウルグアイが前回W杯やテストマッチで大敗を喫した格上のフィジーから大金星を挙げる。 「釜石鵜住居復興スタジアムでのW杯にはたくさんの人の思いが詰まっている。そんな人たちみんなに、『ちゃんとできたよ』と言えるような日になった」 そして、気が楽になった岩崎さんは思った。 「10月の試合は最初から最後まで全部楽しむぞ」 ところがである。日本各地に甚大な被害をもたらした台風19号の影響で、10月13日に釜石で予定されていたカナダ対ナミビアの試合は中止になってしまう。 2試合だけが予定されていた釜石のW杯は、思わぬ形で終止符を打つことになった しかし、岩崎さんの視線はまっすぐと先を見据えている。 「今回のW杯を新たなスタートにしようと思って、これまで頑張ってきました。それなのに、また三陸鉄道がやられてしまい…。ショックは大きいです。震災の時より大きかったくらいです。でも、10月13日の試合が中止になり、空から『まだまだそんなに甘いものじゃないから、頑張れよ』と教えられた気もしています」 少なくとも、今、釜石には、8年前に岩崎さんが頭に思い浮かべたものがある。大槌湾から入ってくると、緑の芝生のラグビースタジアム「釜石鵜住居復興スタジアム」がある。本来ならすれ違うこともなかったような人と人を出会わせる奇跡の場所がある。 「このスタジアムは、そして釜石は、いろいろな人を引き付ける力を持った場所なんです。いつも、外から来た人たちによってドラマが始まってきました。今回も世界中から大勢の人が訪れました。物語はこれから始まるんです」