「局アナ時代は“労働は罰”」「パリ五輪会場で出会った外国人への憧れ」元フジテレビ渡邊渚アナが語る「日本の働き方」への思い
有給取得なのに「お菓子を配る」謎の文化
4ヶ月前、パリオリンピックに行った際に、バレーボールの会場であるドイツ人と仲良くなった。その人は「オリンピックの開催期間中ずっとパリにいる」と言うので、私は思わず「仕事は?」と聞いた。すると「そんなのいつだってできるじゃないか! パリオリンピックは今だけだよ!」と熱い言葉が返ってきた。 詳しく聞くと、彼は見たい試合がない隙間の時間に、最低限の連絡やオンライン会議を2時間やるだけで、仕事は今セーブしていると話してくれた。あ、自分の見たい試合が優先で、それ以外の時間を仕事に充てるのか、と純粋に驚いた。「オリンピックが終わったら、しばらくは仕事を頑張る」とも言っていたから、その時々で仕事と趣味の優先順位は変わるようだ。 日本で働いていると、仕事が最も重要で、自分のやりたいことは二の次。我慢を美徳としがちだ。仕事を休んでやりたいことを優先すれば非常識と言われることもあるし、有給で旅行にいった後には詫びるようにお土産を配る。「お菓子を配る文化、謎だよな」と常々思っていた。休むことは権利なのに、なぜ悪いことのように捉えてしまうのか。
日本は休むことに寛容ではない
オリンピックで出会ったドイツ人の彼は、優先順位をその時々で変えながら、仕事もプライベートも全力投球だった。彼の人生はとても輝いているように見えて、私もこんなふうに生きたいと憧れた。彼は別れ際に「Enjoy your life!」と言いながら手を振ってくれた。 日本は休むことに寛容ではないし、一度立ち止まった人間に厳しい社会だ。でも、誰だって休みは必要だし、立ち止まるのは当たり前。我慢して壊れるより、労働と休みのバランスを自分でコントロールできるほうが、精神的にも身体的にも安心安全な暮らしができるような気がする。 今の私はフリーランスだから自分で仕事を調整できて、プライベートの時間も大切にして、以前より生活を楽しむことができているから、労働が「罰」だとは感じなくなった。バランスは大事だと改めて思う。 また、人生で大切にしたいことは人それぞれで、それは何個あってもいいし、年齢によって異なっていい。自分を幸せに導けるものはいくつだって欲張っていいと思う。だから、働き方の選択を自由にできて、その選択によってキャリアを阻まれることのない世の中に早くなってほしいと願う(願うだけじゃなくて行動しろよとか言われそう)。 性別や生活、病気、子育てなど関係なく、心身ともに健康で過ごすための選択を、何の不安もなくできるような社会になったらな~とぼやぼや思ったことを、今回は綴ってみました。次回は今年ラストかな? お楽しみに。 【プロフィール】渡邊渚(わたなべ・なぎさ)/1997年生まれ、新潟県出身。2020年に慶大卒業後、フジテレビ入社。『めざましテレビ』『もしもツアーズ』など人気番組を担当するも、2023年に体調不良で休業。2024年8月末で同局を退社した。今後はフリーで活動していく。1月29日に初のフォトエッセイが発売予定! 渡邊渚アナの新連載エッセイ「ひたむきに咲く」は「NEWSポストセブン」より隔週で配信していきます。