「心配の範疇を超える事件が」「最初は戸惑いました」 大河ドラマ「光る君へ」に翻弄される文学好きが最推し愛を語る
作家が見る、作家・紫式部
たられば 今回、「光る君へ」をめぐるSNSとコンテンツの幸せな交流の中で発見したことがあるんです。もし平安の宮中で「これはないわ」とか「ときめくー」とか言い合いながら、みんなで『源氏物語』を読んでいたんだとしたら、ドラマを観てSNSでああだこうだ言うのは、千年ぶりにその楽しみ方に回帰しているってことなんじゃないのかなと。 澤田 それ面白いですね。私が編集者さんと話していたのは、『源氏物語』は書いたらすぐに回し読みされていたわけだから、後から遡って物語に手を加えたり修正したりはできなかっただろう。ということは、新人作家の初の長編連載が一発勝負で世に出るわけですよ。ありえん(笑)。 たられば 登場人物も膨大ですしね。その割にはキャラのブレが少なく、一貫している。同じ作家として、紫式部は執筆に際して家系図や人物表などを作っていたと思われますか? 澤田 どうでしょう。でも創作メモを作っておかないと、絶対にわけが分からなくなるだろうなあ。 たられば ですよね。作中で足かけ七十年ぐらい経過しますし、キャラクターたちもそれぞれ年とっていくし。 澤田 思い出したように誰かの娘が登場するし。 たられば そもそも書いたものを取っておけるような部屋もなかったのでは。どこに置いていたのかな。実家? 澤田 しょっちゅう御所が焼ける時代ですから、大事な原稿もメモも焼けちゃうかもしれない。私なら三つぐらい写しを作って、それぞれ違う場所に保管したい。 たられば 澤田さんは執筆の際に、人物相関図や家系図を作りますか? 澤田 家系図は作ります。『のち更に咲く』だったら、小紅たち一家の家系図と、必要があれば道長一家のも書きます。大学ノートを開いて、片側のページに家系図、反対側に一年一行で必要な歴史的事実だけを書いていく。 たられば おお、興味深い。それが設計図ってことですか。 澤田 はい。私は大体、その見開き二ページで収めます。それを横に見ながらA4の用紙一枚にプロットを、もう一枚に人物紹介を書いて、それでもう見切り発車です。