曲がる太陽電池:中国と先陣争いで見切り発車へ、便利でも性能やコストに課題
将来の主戦場は海外市場
新型太陽電池の普及に向け、資源エネルギー庁は5月、官民協議会を立ち上げた。参加者には太陽光発電関連メーカーの顔が並ぶ。一方、ユーザー側として日本経済団体連合会や日本商工会議所など経済団体のほか、JR各社に建設、住宅、不動産、そして全国100以上の自治体がずらりと名を連ねる。自治体が多いのは、新型太陽電池を設置できそうな公共施設を抱えているからだ。 協議会の目的の一つは「需要の創出」。新型太陽電池の船出を後押しするため、ユーザーの協力を取り付けるというものだ。同時に太陽電池メーカーは「生産体制の整備」が求められている。業界からは「どこに設置してもらえるか目標値を決めてほしい。それが見えてこないと、工場を作れと言われても社内決裁が通らない」と本音が漏れる。 メーカーは当面、国内市場での普及に注力しているが、将来の主戦場は国際市場だ。経済調査会社の富士経済によると、「曲がる太陽電池」の市場規模は2040年には国内が233億円程度の見通しなのに対し、海外では100倍以上の2兆4000億円にまで膨らむと予測されている。 産総研の村上氏は、「新型太陽電池は発売したらおしまいではなくて、技術開発を継続していかないといけない。また海外にどんどん展開していかないと本当の意味での量産効果は出ず、値段も十分下がらない。現在は日本企業の技術が世界的に優位に立っているが、手をこまねいていると、シリコン太陽電池と同様に中国企業に市場を取られてしまいかねない」とみている。
【Profile】
持田 譲二(ニッポンドットコム) ニッポンドットコム編集部。時事通信で静岡支局・本社経済部・ロンドン支局の各記者のほか、経済部デスクを務めた。ブルームバーグを経て、2019年2月より現職。趣味はSUP(スタンドアップパドルボード)と減量、ラーメン食べ歩き。