与党との連携が視野に入る国民民主党の経済政策を再度確認:与党は基礎控除引き上げ、トリガー条項凍結解除を受け入れるか?
短期的には電気代・ガソリン代値下げで国民民主党の意見を取り入れるか
与党は、特別国会の首班指名で国民民主党の協力を得るために、2024年度補正予算で手当てする経済対策に、国民民主党の政策を一部取り入れることを検討するだろう。与党は、既に低所得者向け給付を掲げているが、これに加えて、物価高対策の一環で、ガソリン代、電気・ガス代の価格抑制策を加える可能性があるだろう。 国民民主党はガソリン価格を押し上げる特別税率の廃止を止めているトリガー条項の凍結を解除することを主張してきた。これについては、国民民主党の提案で自公両党との3党で検討チームを設置し議論を重ねたが、進展しなかった。凍結解除によって、ガソリン価格は1リットル当たり25.1円低下するが、それは国と地方で大きな税収減になることや、ガソリン価格の低下が脱炭素政策に逆行するなど問題がある。このような点から、トリガー条項の凍結解除は慎重に検討すべき課題と筆者は考える。既に海外での原油価格は安定を取り戻しており、円安傾向に歯止めがかかれば、国内でのガソリン代、電気・ガス代は低下していくことが見込める。 しかし、政治情勢が大きく変わるなか、与党は国民民主党の意見を取り入れてトリガー条項の凍結解除を決める可能性が考えられる。ただし、凍結解除には法改正が必要であり、改正は早くても来年度通常国会になるだろう。そこまでの間、政府は既存のガソリン補助金制度を延長するのではないか。 他方、世帯の平均電気代に1割程度上乗せされている再エネ賦課金の徴収を停止することも国民民主党は主張しているが、同制度を廃止すると、再エネによる発電拡大の大きな障害になる可能性があることから、与党はこれについては受け入れられないのではないか。 今回の経済対策では、将来のトリガー条項の凍結解除を前提にガソリン補助金制度を延長するとともに、電気・ガス補助金制度を単純に延長することが予想される。
所得税減税、年収の壁対策も受け入れるか
国民民主党の玉木代表は、基礎控除等を103万円から178万円に引上げることを通じて、低所得層に対する所得減税を行うとともに、所得税支払いを回避するために労働を控えてしまう「年収の壁」問題への対応を進めることを、同党の「看板政策」と位置付けている。その実施を、政策協力の相手政党にも働きかけていくことが予想される。 「年収の壁」問題には、年収が130万円を超えると、扶養から外れて自身で国民健康保険や国民年金に加入しなければならなくなるという「130万円の壁」もある。これについては、与党も企業への補助金などを通じて既に一定程度対応しているが、より抜本的な対応には、働く女性を前提にしていない「第3号被保険者制度」の見直しなどが必要になる。「第3号被保険者制度」は、女性の社会進出の妨げになっている面もある。 経済対策にはこれら2つの「年収の壁」は織り込まれないだろうが、2025年度の通常国会で審議することを、与党は国民民主党に約束する可能性があるだろう。 他方、国民民主党が主張する消費税率の5%への引き下げについては、大きな税収減につながり、安定した社会保障政策の障害になることや、財政政策の信認を一段と損ねてしまう可能性があることから、与党はそれを受け入れることはないだろう。