最高賞は「噛む家族」 馬渕ありさ監督が雪辱 田辺・弁慶映画祭、和歌山
映画監督の登竜門として知られる、第18回「田辺・弁慶映画祭」(実行委員会主催、紀伊民報など後援)コンペティション部門の表彰式が10日、和歌山県田辺市新屋敷町の紀南文化会館であった。最高賞である弁慶グランプリには、ゾンビの家族を描いた馬渕ありさ監督(29)の作品「噛(か)む家族」(49分)が選ばれた。 【田辺・弁慶映画祭の動画はこちら】 175作品の応募があり、入選した8作品が8、9の両日に上映。映画祭期間中の審査や投票を経て、この日に各賞が発表された。 「噛む家族」は、人を見ると理性を失い、かみつき感染させてしまうゾンビの家族を描いた作品。物珍しいゾンビはSNS上で多様性の時代だと一時はもてはやされるが、炎上をきっかけに世論が変わっていくというストーリー。同作はグランプリのほか、キネマイスター賞、観客賞、フィルミネーション賞、わいず倶楽部賞も受賞した。 馬渕監督は東京都出身で、青山学院大学卒。田辺・弁慶映画祭では昨年も作品「ホモ・アミークス」が入選したが、受賞は逃していた。 馬渕監督は「頭が真っ白。高校生の時にスマホで撮り始めてはまり、大学で映画部に入って本格的に撮り始めた。大学卒業してからもやめられず、学生時代とは違って大変な面がけっこうあったが、諦めずにやってきて本当に良かった。絶対に今日頂いた賞に恥じぬような人生を送りたい」と受賞を喜んだ。 特別審査員長を務めた「キネマ旬報」元編集長の掛尾良夫さんは「今までも無冠で終わってリベンジして受賞した監督は何人かいるが、翌年にチャレンジしてグランプリというのは初めて」と馬渕監督をたたえた。その上で「今までのゾンビ像とは違うちょっとコミカルな家族ドラマになっていたが、背景にマイノリティーに対する批判とかいろんなものがメタファーとして描かれている。日本映画を海外に展開するという意味でも、馬渕さんの世界観は世界に通用する」と講評した。 他の表彰は次の通り。 映画.com賞=「天使たち」(木村ナイマ監督)▽キネマイスター賞=「よそ者の会」(西崎羽美監督)▽俳優賞=「温帯の君へ」出演の山下諒・二田絢乃・さいとうなり、「わたしの頭はいつもうるさい」出演の宮森玲実
紀伊民報