すすきのの老舗ジンギスカン店が東京初出店 優秀な外国人スタッフが店長
本店70周年を迎えるに当たり「新しい挑戦」をしたかった
東京進出のきっかけは何だったのか。 金ちょねさん(以下、金氏): お客さまからあったニーズのうち、特に『新しさを感じること』に挑戦したいと思ったからだ。だるまは24年10月10日に創業70周年を迎える。そこで、23年から70周年に向けた新たな取り組みとして、お客さまからの要望が多いことを実施するという挑戦を開始した。まず、お昼から営業してほしいという声に応えようとしたが、実際にどこまで集客できるかは不透明だった。 しかし、すすきの駅近くにあるだるま 4・4店の裏手に、複合ショッピングセンターの「COCONO SUSUKINO(ココノ ススキノ)」がオープンしたため、グループ店の中で唯一、お昼の集客が見込めるだろうと昼営業を開始した。 すると、買い物後のお客さまを呼び込むことに成功した。さらに午後の飛行機で北海道を離れるお客さまが、旅立つ前に「もう一度、だるまのジンギスカンを食べたい」と寄ってもらえるようになった。 すばらしいリサーチ力だ。他に実施したことはあるか。 金氏: だるまでは、今まで予約を一切取っていなかったが、「予約を受け付けてほしい」「接待で利用するために予約したい」という要望が多かったため、トライアルで「だるま 7・4店」だけ有料の予約制(1人当たり1時間500円)を導入した。有料にもかかわらず、予約は埋まっている。 ●東京出店は、お客さんからの要望で実現 金氏: 24年の正月に家族が一同に集まって会議を行った。そのときに「もう1店舗出そう」という話になり、最初は札幌駅に出店する案が出た。しかし、「それでは当たり前過ぎておもしろくない」という意見が出た。 地元の常連客以外では、東京から来られるお客さまが最も多く、「東京にお店を出してほしい」とよく言われていたので、創業70周年を記念する最大のチャレンジとして、東京に出店を決めた。 場所を上野御徒町にした理由は何だったのか。 金氏:赤坂、銀座コリドー街、上野御徒町など、いろいろな場所に足を運び、時間帯や曜日を変え、1分間に人が何人通るのか、人数をカウントした。その結果、圧倒的に上野御徒町の人出が多かった。加えて、すすきのと雰囲気が似ていたことや、いい物件に出合えたことなどがあり、この地に決めた。 それはよかった。しかし羊肉の仕入れを東京でどう実現するかハードルもあったのでは。 金氏:札幌で生のマトンを卸してくれていた業者さんたちが、だるまのファンで、「東京でも同じ味を出させてあげたい」と一致団結してくれた。おかげで食材をチルドでしっかり供給してもらっている。輸送経費が余計にかかるが、東京での価格は各メニューとも、札幌より10円高いだけにとどめた。 味も価格も札幌と限りなく同じにしたい心意気を感じる。新型コロナウイルス禍では、どんな状況だったのか。 金氏:最初に緊急事態宣言が発令されたときは、すすきのから人がいなくなった。社長と副社長は、「うちがどう動くかを見ている飲食店さんが多い。閉めるならだらだらしないで思い切って閉めよう」と考え、国のガイドラインに沿ってしばらくの間、休業した。具体的な数字は回答ができないが、売り上げは半分以下に落ち、かなり厳しかった。体感的ではあるが、コロナ禍が明けても深夜は、人がまだ戻って来ていない。 現在、飲食業界では人手不足が問題になっているが、だるまでは10年間以上前からベトナムやネパールなどの外国人スタッフを採用していると聞いた。それはなぜか。