【病院の闇】生活保護者をムリヤリ入院させ、手術しまくる…医療界を震撼させた「山本病院事件」をご存じか
誰が言ったか「最強の免罪符」。多くの人を傷つけ過ちをくり返す者でも、医師の肩書さえ持っていれば野放しにされるのが、この国の現状だ。何も知らない患者が、身を守る術はあるのだろうか。 【写真】『脳外科医 竹田くん』モデル医師が診療を続ける「ヤバい理由」 前編記事はこちら: 『竹田くん』だけじゃない…「ヤバすぎる医者」に看護師は何も言えず、病院は全力で擁護する「この国の医療の現実」
「切れば切るほど儲かる」カラクリ
医療事故の中で突出して数が多いのが、手術にかかわるものだ。日本医療機能評価機構による最新の調べでは、'22年に発生した医療事故5313件のうち、約3分の1が外科で起きている。 外科の事故で近年、社会にもっとも大きな衝撃を与えたのは、群馬大学医学部附属病院で'14年に発覚した連続手術ミスだろう。'09年からの5年間に、消化器外科の40代男性助教が執刀した腹腔鏡手術・開腹手術で、あわせて18人もの患者が相次いで亡くなった。 医療事故・医療過誤訴訟を数多く扱う弁護士の貞友義典氏が言う。 「『医療事故』というと、あくまでも過失、つまり単なるミスや技術・経験不足によって起きるという印象を抱くかもしれません。しかし実際には、同じ医者が何回も同じような誤った医療行為を繰り返し、患者を死なせ、さらに病院もそれを咎めない『リピーター医師』が後を絶たないのです。『故意犯』と言っても過言ではない事例さえ珍しくありません」 背後にあるのは「たくさん手術をこなすのが優れた外科医」という医療界の固定観念、そして「切れば切るほど儲かる」カラクリだ。 群馬大学病院の事件が発覚した当時、院長の田村遵一氏は「(消化器外科は)病院経営に寄与するために努力していた」と述べている。保険点数が高く高難度の手術をすればするほど、病院にカネが入り、医者の地位も上がるというわけだ。
孤独な人を「強制手術」
このカラクリを悪用した例として、とりわけ悪質なのが、'09年に奈良県大和郡山市で起きた「山本病院事件」である。 「山本病院は病床数80ほどの中規模病院ですが、身寄りがなく相談相手もいない生活保護受給者をたくさん入院させ、必要のない心臓カテーテル手術を施していました。それにより、多額の診療報酬・保険料を不正受給していたのです。 不正は警察に露見し、理事長が逮捕されて実刑判決が確定、病院は閉鎖となりました。しかし、これほど悪質でなくとも、患者や家族の不安を煽って『とにかく手術しましょう』と勧める外科医は全国にいます」(前出・貞友氏) こうした「実利」が目的であれば、まだ動機がわかりやすい。しかし中には、自らの「快楽」のために患者を切り刻む医者もいるというから恐ろしい。関西のある総合病院の外科に勤める中堅医師が明かす。 「私が以前所属していた診療科トップの先生は、『生きている人の体の中は、ものすごくキレイだ』『芸術的なんだ』と言って、手術する必要のない患者を切りたがる人でした。幸い、亡くなる人こそいませんでしたが、部下として本当にいたたまれなかった」 医学部に入り、医師の国家試験に受かるには知力が重要だが、外科医にはそれだけでなく、器用さや、血を見ても動じない性格も要求される。「常に手術していないと、手先のカンが鈍る」などと言って、患者を練習台のように扱う者も中にはいる。