レバノンの首都ベイルート郊外など各地で17日、親イラン民兵組織「ヒズボラ」の戦闘員らが使用している「ポケットベル（ポケベル）」型の通信機器が次々に爆発した。レバノンのフィラス・アビアド保健相は、子供を含む9人が死亡、約2800人が負傷したと発表した。爆発原因は「バッテリーの過熱」「マルウエア（悪意のあるソフト）」などの可能性が報じられているが、レバノン外務省は「イスラエルのサイバー攻撃」と非難し、ヒズボラは報復を宣言した。中東で交戦が激化する恐れが出てきた。 「市民を巻き込んだ違法な攻撃の全責任はイスラエルにある」 ヒズボラは声明でこう非難し、「同等の報いを受ける」と強調した。 負傷者のうち200人が重傷で、駐レバノンのイラン大使が軽傷を負ったとの情報もある。 海外メディアの報道によると、爆発はヒズボラが影響力を持つベイルート南部やベカー高原を中心に約1時間にわたり起きた。ヒズボラは、イスラエルによる通信傍受や追跡を警戒して携帯電話の使用を制限し、爆発した通信機器を使っていたとされる。 通信機器は、ヒズボラが数カ月前に持ち込んだとみられ、爆発原因については情報が錯綜（さくそう）している。米ブルームバーグ通信は、レバノンの通信相の話として「無線機器のバッテリーが過熱した可能性が高く、爆発はその後に起きたとし、『汚い手』が使われたとの見方を示した」と報じた。米ウォールストリート・ジャーナルは、ヒズボラ関係者が「マルウエアが原因で爆発した可能性があるとの見方を示した」と伝えた。 識者はどうみるか。 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「間違いないのは、今回爆発したポケベルには事前に爆発物が仕込まれていたということだろう。普通のポケベルでは仮にリチウムイオン電池が爆発してもこれだけの規模にはならない。おそらく特定の電波信号で起爆するような何らかの仕掛けも組み込まれた、テロ作戦用に改造されたポケベルだったのではないか」と話した。