W杯アジア最終予選、日本は「厳しいグループ」?…9月の初戦・中国が重要になる「甘くない状況」
越えなければならない「初戦の壁」
日本代表が置かれた状況を考えれば、いくら実力差があってもパッと集まってサクッと勝てるほど甘くはないということ。勝たなきゃという気持ちばかりが先走ってしまえば、焦りを生む悪循環にもなってしまう。 ただ、結果的に日本代表はこの課題と向き合いながら最終的には3位のオーストラリアに勝ち点7差をつけて2位通過を果たした。集合前に相手のスカウティング情報を選手側に伝えるなどより入念な準備で克服している。森保監督はこのように述べていた。 「わずか2、3日間で長距離移動の疲れを取り、時差を調整し、気候に順化していくなかで試合をすることがどれほど大変か。みんな熟睡できず、体の状態も戻らないまま最大限の力を出そうとしてくれました。代表選手なら当たり前と言われるかもしれませんが、そんな簡単なことじゃない。 代表の試合が終わって所属クラブに戻ったら試合にポジションを再び奪うところから始めなきゃいけない場合もあります。自分のため、というくらいの志じゃ(気持ちは)持たない。日本サッカーの勝利と発展のためと思って彼らはやってくれています。近くで見ている僕が一番そう感じています」 試練が全員を心身ともにタフにした。それがカタールワールドカップ本大会の戦いにもつながった。 今回、越えなければならないのが言うまでもなく「9月、初戦の壁」である。森保監督はその準備の一端として、既に突破を決めている2次予選の残り2試合(6月6日、ミャンマー代表戦、11日シリア代表戦)において敢えてベストメンバーを集めている。この点について直接尋ねた際、彼はこう言った。 「欧州のシーズンが終わったタイミングで(メンバーを入れ替えて)チームとして幅を広げることも考えました。試合数の多かった選手は疲労も当然ありますから。しかし選手たちは6月の活動に対しても意欲を示してくれ、これまでのメンバーを継続することになりました。最終予選に向けた戦いはもう始まっているので、よりよい準備をしていくことが大切だと思っています」 これまでオプションだった3バックをスタートからテストしてミャンマー戦、シリア戦いずれも快勝。最終予選に向けて有意義な時間とした。オフを挟むためコンディションの問題は出てくるにせよ、選手たちに9月の2連戦の初戦をしっかりと意識させる目的もあったはずである。 グループ分けと同時に試合の日程、対戦順も決定している。注目する9月5日の初戦は何という偶然だろうか、ホームで中国と対戦。アジアカップ以降から中国の指揮を執っているのがブランコ・イバンコビッチ監督であり、3年前にオマーン代表を率いて日本を破ったその人と再び同じシチュエーションで相まみえることになったのだ。森保ジャパンは前回の苦い教訓を活かすことができるのか――。
二宮 寿朗(スポーツライター)