崖っぷちリーダー吉田麻也が激白「W杯後の僕は選手として何もしていない」
練習を早めに切り上げることが許されても、DF吉田麻也(サウサンプトン)はロッカールームの前に座ってピッチを眺め続けた。視線の先では合宿初日だった8日から新潟の地に集い、コンディションを整えていた森保ジャパンのチームメイトたちが8対8のミニゲームで汗を流している。 「自分が対戦したことがないというか、一緒にプレーをしたことのない若い選手が多いので、なるべく早く特徴をつかみたいと思って」 9日早朝にロンドンから帰国し、その足でパナマ代表とのキリンチャレンジカップ2018(12日・デンカビッグスワンスタジアム)が行われる新潟へ。ワールドカップ・ロシア大会を戦ったDF長友佑都(ガラタサライ)、DF酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)とともに森保ジャパンに初めて合流した。 後半アディショナルタイムの失点で、ベルギー代表に悪夢の逆転負けを喫したロシア大会の決勝トーナメント1回戦以来、約3ヵ月ぶりに見る日本代表の光景。西野朗前監督からバトンを引き継いだ森保一新監督のもとで、9月に始動したチームの顔ぶれはがらりと変わっていた。 20歳のMF堂安律(FCフローニンゲン)、19歳で海を渡ったDF冨安健洋(シントトロイデンVV)の東京五輪世代だけではない。29歳になったばかりのDF佐々木翔(サンフレッチェ広島)、26歳のGKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)らの中堅組を含めて、初対面の選手は8人を数えた。 新戦力の多さは、イコール、代表に呼ばれなくなった選手も多いことを意味する。 ロシア大会を戦った盟友ではGK川島永嗣(RCストラスブール)であり、MF本田圭佑(メルボルン・ビクトリー)であり、8年間にわたってキャプテンを務めたMF長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)となる。
W杯後の僕はサッカー選手として何もやっていない
特に長谷部は不動のボランチとして、頼れる背中を常にセンターバックの吉田に見せてきた。5人の代表監督のもとで必死にチームをまとめる姿を間近で見てきたからこそ、ロシア大会敗退とともに代表引退を表明した長谷部へ捧げる思いを問われたときには、テレビカメラの前ではばかることなく号泣した。 もっとも、センチメンタルな感情が高ぶったのは一瞬だけだった。絶えず新陳代謝を繰り返しながら、過去から現在、そして未来へと紡がれていく日本代表の歴史に再び身を投じたとき、8月に30歳となり、ベテランと呼ばれる域に足を踏み入れた吉田の胸中には不退転の決意がみなぎっていた。 「日の丸を背負う覚悟と責任、そして誇りをもって戦わなければいけないことをいま一度、若い選手たちにプレーをもって示さなければならないと思っています。もちろんハセ(長谷部)さんたちだけではなく、先輩方がいままで築き上げてきたものを継承して、よりよい次の日本の歴史を作っていくためにも、ワールドカップで少しいい成績を出せたからと言ってそこで終わりではなく、立ち止まることなく進み続けなければいけない。自分のサッカー人生も日本のサッカーも、まだまだ続いていくので」 自分自身に目を向ければ、忸怩たる思いとともに帰国した。今年3月に就任したマーク・ヒューズ監督が、引き続き指揮を執る今シーズンのサウサンプトンでカップ戦要員に甘んじてきた。チェルシーと対峙した今月7日の第8節で初めてプレミアリーグの舞台に立ったものの、3点を奪われて完敗した。 「ワールドカップが終わってからの僕は、サッカー選手として何もやっていないというか、何の手応えもない状態でここまできている」 2つのカップ戦を含めた3試合、合計で270分間という数字には到底満足できない。危機感を募らせているからこそ、パナマ代表に続いてFIFAランキング5位のウルグアイ代表と埼玉スタジアムで対戦する10月シリーズ、そして日本滞在中に積む練習における一挙手一投足に魂を込めると誓う。 「なぜ自分が長く代表でプレーできて、この代表にも選ばれたのかを監督、コーチングスタッフ、そして新しい選手たちに対して証明しなければいけない。こういう難しい状況は過去にもあったし、マネジメントするのは簡単ではないけど、それでもやるしかない。どのような状況であっても、イングランドでプレーしていて、代表でも長くプレーしている選手という見られ方をするのは重々理解しているので」