崖っぷちリーダー吉田麻也が激白「W杯後の僕は選手として何もしていない」
チームを引っ張っていかねばならない
ハリルジャパン時代には、長谷部を故障で欠いた試合で幾度となくキャプテンマークを巻いた。そのたびに「僕は『長谷部誠』にはなれない」という言葉を繰り返し発してきた。 「無理をしてハセさんみたいに振る舞う必要もない。僕にできるリードの仕方があると思うし、自分が信じる道、自分が正しいと思うリーダーシップを発揮できれば」 コスタリカ代表に快勝した9月シリーズで、森保監督はサンフレッチェ広島時代の愛弟子でもある32歳のMF青山敏弘をキャプテンに指名した。しかし、今シリーズでは一転して「フラットに考えたい」と、誰に託すのかをまだ明言していない。候補の一人に間違いなく入る吉田は、こう公言してはばからない。 「ポジション的にも立場的にもチームを引っ張っていかなければいけない、ということも重々理解しています。なので、いつも通りやるだけです」 継続的に招集されるようになって7年目。その間に2度のワールドカップを戦い、キャップ数を「86」にまで伸ばしたいま、たとえ左腕にキャプテンマークを巻かなくとも相手の攻撃陣と真っ向から対峙し、大声と存在感とを介して最終ラインからチーム全体を鼓舞することで、心身両面で日本をけん引してきた。 自分なりのキャプテンシーの表現方法へたどり着いた。同時にコスタリカ戦を映像で見たときに、心がワクワクするのを抑えられなかったと打ち明ける。高揚感にも似た思いは、4年後のカタール大会へ向けて船出した新生日本代表を内側から変えていく力になると吉田は信じて疑わない。 「フレッシュで勢いがあって、チャンスを与えられた一人ひとりがアピールしたいという気持ちや気迫が前面に出ていた。ワールドカップ前はあまり感じられなかったことであり、新しい競争が芽生えればそれだけ選手間の危機感も高まり、チームの成長にもつながると確信している」 時差ぼけを含めたコンディションも整え、ともに9日に帰国・合流した初対面のMF中島翔哉(ポルティモネンセSC)らとともに、10日からはフルメニューでパナマ戦へ向けた練習に臨む。 「この(世代間の)融合がプラスに働くんじゃないかなと、すごくポジティブな気持ちでいます」 雄々しく帆を張りだした船に乗り遅れてたまるかという、A代表に初めて呼ばれたころのギラギラした挑戦者魂。そして、長谷部や本田らの立ち居振る舞いから学んだ、日の丸へ注ぐ覚悟や誇りを次世代へ伝えていく使命感。対照的な思いを胸中に同居させながら、吉田はカタールへのスタートラインに立った。 (文責・藤江直人/スポーツライター)