福岡・天神に14年ぶり、よしもとの常設劇場が復活 福岡の笑いを変えるのか?
九州の芸人による「九州新喜劇」も旗揚げ
よしもとの常設劇場の開設よりいち早く福岡の笑いを盛り上げたのが、今年2月、吉本新喜劇の九州版「九州新喜劇」の旗揚げ公演だ。吉本新喜劇メンバーとしても活躍した寿一実を座長に、コンバット満やケン坊田中、安井まさじ、サカイスト、レモンティーらで構成。ネタゲストには博多華丸・大吉やパンクブーブーらが華を添え、完売御礼の大盛況で幕を下ろした。
8月26日に行われた夏公演では、マドンナオーディションで選ばれた新メンバーも集結。パンクブーブーの佐藤哲夫が脚本を手掛け、テンポの良い芝居で会場を沸かせた。 「九州を中心に盛り上げたい」と寿座長。「もっと九州らしさを出して、今後は九州各県で公演を成功されるため、手探り状態ながらも頑張りたい」と意気込む。
コンテンツは出揃った 次は人材育成へ
常設劇場の復活、九州新喜劇の旗揚げ。福岡の笑いのコンテンツが出揃った今、それを担う人材の育成にも着手している。 4月にはお笑い芸人やタレントの養成所「吉本総合芸能学院(通称:NSC)」の福岡校が開校した。学生や会社員、弁護士、介護士、農家など、さまざまな職業の10代から50代が入学し、現在32人が1期生として在籍している。 大阪校や東京校と違い、授業を行うのは土日祝日のみ。 「仕事をしながらでも通える、少しでもお笑いに興味のある才能ある人を応援したい。たくさんの人と出会えたら」(泉さん)と間口を広げ、気軽に通える環境にこだわった。
講師は構成作家や第一線で活躍する芸人らが務める。取材に訪れた日は、吉本新喜劇の川畑泰史座長による授業が行われていた。 「おい、ここが今日、俺らが借金を取り立てる喫茶店や!」 「へい!」 派手なスーツに身を包んだ借金取りが登場する、新喜劇ではお馴染みの場面。4~5人のグループに分けられた生徒が独自のボケを盛り込んだ1シーンを実践し、川畑座長が直接指導をしていく。 「重ならないように立ち位置に気を付けて」「このボケを生かすにはもっとフリを作っとかな」 温厚なトーンの会話ながらも的確なアドバイスが飛ぶ。 授業を終えた川畑座長に話を聞くと、「バンドマンの夢破れてサラリーマンだった頃、ダウンタウンの番組を見てピンときたんです。それから吉本に電話したら今ちょうど養成所が募集していると。すぐに履歴書を送りました」と自身の“当時”を振り返ってくれた。 「福岡の芸人と言えば、同期の華大が舞台袖で先輩芸人の芸を少しでも吸収したろうとすごい集中力を見せていたのを思い出します。劇場もできてNSCもできて、今から福岡は楽しみですね」と期待を寄せる。 緊張しているのか、まだまだ声が小さい生徒も多かったが、終了後、生徒に声を掛けると夢を語る目はキラキラしていた。 「小さい頃から新喜劇が大好きで。すぐ近くで座長直々に流れの作り方や立ち位置の話を聞けて貴重な時間でした」と福岡校1期生のカリブカイ・佐藤桃子さん。大学を辞めてNSCに入ったという、ぽんこつラーメンの田島優弘(ゆうせい)さんは「華大さんが目標。福岡で知名度を上げて九州を盛り上げたい。福岡でもお笑いがやれるんだというのをアピールしたい」と話す。