中国に「流動性のわな」懸念浮上-資金調達コスト、全面的に低下
(ブルームバーグ): 中国はデフレ圧力を食い止め、個人消費と企業支出を回復させようとしており、本土市場で全面的に資金調達コストが低下している。
中国人民銀行(中央銀行)は過去1年で、政策金利を2度引き下げたが、融資の伸びは今年1月、記録的低水準となった。信頼感の欠如が消費者と企業の現金保有に拍車をかけており、金融政策が経済を刺激できないのではとの懸念を抱くアナリストも出てきている。「流動性のわな」に陥りつつある最初の兆しかもしれない。
指標の中国国債利回りは2002年以来の低水準となり、政策金利に敏感な短期金利スワップは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生した20年の水準に近い。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊宇霆氏は「実体経済の活動がますます金融政策に反応しなくなっている。流動性のわなのリスクが迫っているとしか言いようがない。物価が下がるにつれ、世帯も企業も支出を先送りし貯蓄を選ぶだろう」と述べた。
家計貯蓄
経済活動に金融政策の効果が行き渡っていないことを示す兆候として、中国の家計貯蓄はこの1年、マネーサプライ(通貨供給量)と共に膨らんだ。一方、融資の伸びは1月に過去最低となった。
所得と住宅価格の先行きが不透明なため、消費者は住宅ローンの借り入れに慎重だ。不動産業界では多くのデフォルト(債務不履行)が発生しており、銀行はデベロッパー向け融資に消極的。
利回り低下
中国国債の値上がりがここ数週間で加速しており、ベンチマークである10年債の利回りは今週、02年以来の低水準となる約2.35%まで低下した。ブルームバーグがまとめたデータによると、中国国債の30年債利回りは過去5営業日で11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下げ、これは22年8月以降で最も速い低下ペース。
スプレッド圧縮
社債による資金調達もかなり低コストになっている。ブルームバーグが集計したデータによると、「AA」格付けの5年債のイールドプレミアムは今週70bpまで縮小し、07年以降で最もタイトになった。中国の銀行が発行する劣後債のクーポンは、今年に入り平均2.8%と、ブルームバーグが14年にデータ提供を開始して以後で最も低い。