日本の港が直面する危機! AI活用で物流効率化と競争力強化が急務なワケ
スマートポートの具体的な施策
具体的には下記のような活動を行っている。 ●ターミナルオペレーションの効率化 コンテナ船の大型化で積み降ろし作業の量が増えているため、荷役効率の向上が求められている。AIを使って荷物の移動回数を最小限に抑え、無駄のない効率的なオペレーションを実現し、ターミナル全体の生産性を向上させる。 ●遠隔操作RTGの導入 タイヤ式門型クレーン(RTG)の操作を遠隔化することで、オペレーターが快適で安全に作業できる環境を整備する。同時に、RTGの性能を最大限引き出し、処理能力を高める。 ●コンテナ損傷チェック支援システム 従来、コンテナの損傷チェックは高所作業を伴う目視で行われていたが、AIを活用したシステムを開発し、搬出入作業のスピードアップを図る。このシステムでターミナル内の効率性と作業環境を改善する。 ●若手技能者の育成 熟練者の技術やノウハウを明確化し、VRシミュレーターやMRデバイスで実機に近い環境を再現する。これにより、効率的に若手技能者に技術を継承できるようにする。 ●新港湾情報システム「CONPAS」の活用 「CONPAS」はコンテナターミナルの混雑緩和やトレーラーの滞在時間短縮を目的としたシステムだ。PSカードを使った処理時間の短縮や予約制度による到着時間の平準化で、搬出入作業の効率化と物流のスムーズ化を実現する。 ●予兆保全システム ガントリークレーンの異常は定期点検では見つけにくいが、モーターや巻き上げ装置に設置したセンサーで振動や温度を測定し、そのデータをAIで解析することで、異常の早期検知を可能にする。 ●図面の電子化 港湾関係者間の紙や電話、メールでのやり取りを電子化し、情報を一元化する「サイバーポート」を国土交通省が推進している。この情報プラットホームにより、港湾全体の生産性を高めることを目指している。
四つのメリット
スマートポートの導入によるメリットは主に四つある。まず、AIやIoTを活用した効率的なオペレーションで港湾の生産性が向上することだ。 次に、労働環境の改善が挙げられる。遠隔操作や自動化により、従業員の負担を軽減し、より快適な労働環境を整えることができる。 また、環境負荷の軽減も期待されている。効率化が進むことで燃料消費が減り、二酸化炭素の排出量も抑えられる。 最後に、コスト削減だ。効率的な運営により運用コストを削減し、港湾の競争力を高めることが可能になる。 スマートポートは、デジタル技術の進展によって日本の港湾が新たなステージに進むための重要な一歩だ。 国土交通省が進めるスマートポート構想は、日本が国際的な物流競争で競争力を維持し、持続可能な社会にも貢献するための鍵となる施策だ。 今後、技術の進化やインフラ整備、人材育成が進むことで、スマートポートが実現し、日本の港湾はさらなる成長を遂げることが期待されている。
岩城寿也(海事ライター)