なぜ開幕戦でゴールを決めた久保建英のFW能力を称賛した森保監督は彼を生かす2トップ構想には消極的なのか?
7大会連続7度目のワールドカップ出場を決めたアジア最終予選を、森保監督は途中でシステムを4-2-3-1から4-3-3へ切り替えて突破した。ヨーロッパ組を招集できた6月シリーズは4-3-3を踏襲し、国内組だけの編成で臨んだ7月のEAFF E-1サッカー選手権では主戦システムを4-2-3-1にすえて優勝した。 振り返れば3月シリーズから、長く不動の1トップを担ってきたFW大迫勇也(32、ヴィッセル神戸)をコンディション不良で欠いている。4-2-3-1も4-3-3も、前線でボールを収めて攻撃の起点になれる大迫ありきのシステムだった。 しかし、現状では大迫と同じ役割を託せるフォワードはいない。ならば2トップを含めて、これまでと異なる形を試すべき状況でも森保監督は動かなかった。 たとえば6月シリーズは、古橋亨梧(27、セルティック)や浅野拓磨(27、ボーフム)らスピードを武器とするフォワード陣に加えて、万能型の上田綺世(23、サークル・ブルージュ)も招集しながらも、4試合を通じて大迫抜きの最適解を見いだせなかった。というよりも、見いだそうとしなかったと表現した方が正しいだろう。 固定された先発メンバーやポジションごとの序列を含めて森保監督が貫き、メディアやファン・サポーターから批判を浴びる対象にもなってきた頑固一徹な性格。久保が見せた新たな可能性よりも積み重ねてきた代表チームの戦い方、あるいはコンセプトが上位に置かれた返答を介して、あらためて発現したといっていい。 背景には大迫の復調ぶりも大きく関係しているはずだ。 なかなかコンディションが戻らず、J1リーグ戦で後半途中からの出場が続いていた大迫は、直近の2試合で続けて先発出場。プレー時間も73分から78分へと増えている。 「もちろん候補に入れて、考えていきたいと思っている」 9月23日にアメリカ、27日にはエクアドルと、ともにカタール大会に出場する代表チームと、ドイツのデュッセルドルフ・アレーナで対戦する、カタール大会前で最後の活動となるヨーロッパ遠征での大迫の復帰を問われた森保監督はこう即答した。 さらに好スタートを切った久保に対して、持続させてほしいと注文を出した。 「レアル・ソシエダは戦術的に戦えるチームであり、対戦相手やチーム状況によってタケに対するタスクもまたいろいろと変わってくると思うので、そのなかで試行錯誤して自分が生きる形を見せてほしい。何よりも彼のよさは攻撃面で発揮されるので、今回のように得点を決め、味方に得点を決めさせる数字をとことん目指してほしい」 ドイツ代表とのグループリーグ初戦まで残り3ヵ月あまり。森保監督のモードは新しい形へのトライよりも、これまでの形を熟成させる作業へ必然的に傾いている。 そのなかで、カタール大会までのわずかな期間でも成長したいという思いを抱きながら新天地で結果を残す、久保をはじめとする選手たちがいい意味での悩みを指揮官に引き起こさせれば、その分だけ日本代表の可能性が膨らんでいく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)