なぜ開幕戦でゴールを決めた久保建英のFW能力を称賛した森保監督は彼を生かす2トップ構想には消極的なのか?
ヨーロッパのシーズンが閉幕に近づいていた、5月上旬に行われたオンライン取材。残留争いの渦中にあったマジョルカで、コンスタントに出場機会を得られなかった久保を鼓舞するように、森保監督はあえて厳しく言及した。 「タケが成長するにあたって、ひと皮むけないといけない時期かなと思っている」 その後の久保は6月のガーナ代表との国際親善試合でデビューから3年、出場17試合目にして待望の代表初ゴールをゲット。7月には自らの希望を通す形でレアル・マドリードからソシエダへ、期限付き移籍ではなく完全移籍で加入した。 「期限付き移籍にはいい面も悪い面もある。悪い面では、たとえ100%の力を出し尽くしても『どうせレンタルだろう』と考えられてしまうこと。今シーズンはそれがなくなるし、より腰をすえてプレーできるとポジティブに考えています」 2019年6月に5年契約でFC東京から加入した王者に居場所がなくなる今シーズンの挑戦を久保は歓迎していた。そして、開幕戦で決めた決勝ゴール。オンライン取材では森保監督へ「ひと皮むけたのでは」という質問が飛んだ。 指揮官は「1試合だけですべてが変わった、ということはないと思う」と断りを入れながらも、過去から現在、そして未来へ続く久保の取り組みを高く評価した。 「間違いなく常に成長している選手であり、自分が成長するために、レベルアップするために何をしなければいけないのか、という点を整理できている賢さも持っている」 カタールワールドカップの開幕がシーズン途中の11月に迫るなかで、キャプテンのDF吉田麻也(33、シャルケ)をはじめ、FW南野拓実(27、モナコ)やFW三笘薫(25、ブライトン)ら多くのヨーロッパ組が今夏に所属チームを変えた。 新天地への順応が遅れれば、代表へも少なからず影響をおよぼす。リスクを覚悟してステップアップを決めた選手のなかで、MF堂安律(24、フライブルク)、DF板倉滉(25、ボルシアMG)らに続いて久保がまばゆい輝きを放った。 しかも、これまで久保が起用されてきたトップ下やウイング、あるいはインサイドハーフではなく、2トップの一角として新たなプレーをアピール。カタール大会を含めて、A代表の戦い方へも相乗効果をおよぼす可能性も示した。 もっとも、いまひとつ殻を破れなかった久保の起用法で、ソシエダと代表とがリンクするのではと問われた森保監督の反応は決して芳しいものではなかった。 「タケのよさを出させてあげたいと思いますけど、その前に代表チームの戦い方があり、もともとやってきたコンセプトというところもある。なので、チームの戦い方をまずは一番に考えたなかで、彼のよさを少しでも発揮させてあげられるようなポジションや、あるいは役割といったものを伝えていきたいと思います」