“普通の”元会社員ほど定年後「仕事がない」切実 シニアがいきいき働き続けられる場はどこに?
前田さんは「キャリアという切り口で高齢者を捉えたとき、大まかに3つの層に分類できる」と解説する。 まず1つ目の「Ⅰ層」は、経営者や大学教授などのハイキャリア層や、専門の職業資格・スキルを持っているスペシャリストの層だ。 この層はこれまで培った人脈や民間の派遣会社(エグゼクティブ層のエージェント)を通じて、中小企業の顧問や社外取締役などの要職に就くことができる。 あるいは自ら起業して、新たな事業を始める人も多いだろう。つまり、定年後のセカンドキャリアに比較的スムーズに移行しやすく、社会からの支援の必要性が少ない層だ。
2つ目が「Ⅱ層」。定年を迎えた、いわゆる“普通”の元会社員や公務員である。この層の人たちは主に民間企業で定年まで勤め上げ、課長や部長として部署のマネジメント経験を持つ人も多い。 何か特別な専門スキルがあるというよりは、スキルや経験が広範囲にわたる「ジェネラリスト」の要素が強いと言える。 そして3つ目の「Ⅲ層」が、非正規雇用などで年金額も少なく、生計のために働かざるを得ない生活困窮者の層だ。 主にハローワークを通じて、なんとか仕事を確保し、生活を維持し続ける必要がある。
■会社員時代の経験を活かしにくい マッチング困難の問題を抱えているのは、2つ目のⅡ層シニアだ。 この層は人数的に最もボリュームが大きいにもかかわらず、そもそもⅡ層シニアを対象とした求人自体が乏しく、マッチングを支援する民間の派遣会社も少ない。 そこで、自らハローワークに出向いて求人を探す人が多いのだが、高齢者向けの求人は「軽作業、清掃、マンション・駐車場の管理、保安、送迎ドライバー」が大多数を占める。
シルバー人材センターを利用するという選択肢もあるが、就業時間の制限や会費の支払いなどさまざまな条件があり、利用を踏みとどまるケースも少なくない。近年、加入率が低迷していることも課題となっている。 業界によっては深刻な人手不足もあり、高齢者向けの求人は増えている。だが、Ⅱ層シニアの希望にマッチする仕事がほとんどない。 ここに、空洞化の問題が生じていると前田さんは指摘する。 ■雇用の場を生み出すのが重要