ファストファッションが存在感を強めるなか、伝統技術の 職人 とタッグを組むファッションブランド
若手職人の育成に投資するファッション業界
ファッション業界では、LVMHのような企業がこうした伝統技法を存続させるために投資をはじめている。昨年末、LVMHとティファニー(Tiffany & Co.)はファッション工科大学(Fashion Institute of Technology)と提携し、若手ジュエリー職人の育成に乗り出した。 ケリング(Kering)もまた伝統工芸における新たな職人の育成に投資するために、昨年10月、傘下ブランドであるボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)で「アカデミア ラボル エ インゲニウム(Academia Labor et Ingenium)」という次世代の職人の才能を育てる専門学校の設立を発表した。ほかにも、ネスト(Nest)がメイドウェル(Madewell)といったブランドと世界中の職人を結びつけ、ハンドメイド商品の小ロット生産を行っている。 そして今年、クロースリークラフテッド(Closely Crafted)という団体がニューヨーク市のファッションの中心であるガーメント・ディストリクトで、若手職人のための初の見習いマッチングプログラムを開始する。同団体は2022年に、帽子ブランドのジジ バリス(Gigi Burris)創業者でもあるジジ・バリス・オハラ氏が、マルカリアン(Markarian)のアレクサンドラ・オニール氏やパブリックスクール(Public School)のマックスウェル・オズボーン氏といったファッション業界の逸材たちの支援を受けて創設した。 クロースリークラフテッドの紹介動画 バリス氏によれば、ファッション業界は「CFDA/ヴォーグ・ファッションファンド(CFDA/Vogue Fashion Fund)」などのプログラムを通じて、米国内の若手デザイナーを育成するという偉業を成し遂げてきたが、それに比べると若手職人の新世代に対する資金援助はほとんどなかったという。 「職人の才能を育てなければ、若手デザイナーたちは自分たちのブランドを有機的に成長させていくことはできないだろう」。