停戦で5か月ぶりの我が家、母が焼くクッキーの匂い「温かさ思い出した」…3日後の爆発音で再び避難
【カイロ=西田道成】レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラは2日、イスラエル北部に2発の迫撃砲を撃ち込んだ。この攻撃を受け、イスラエル軍は同日、レバノン南部を中心に激しい空爆を行った。双方の応酬で停戦合意は崩壊の危機に直面している。 【図】一目でわかる…イスラエル・ヒズボラ停戦合意のポイント
レバノンでは、イスラエルとイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘で約120万人が避難生活を強いられてきた。停戦合意を受け、多くの住民が自宅へ向かったが、空爆は続き、本紙の電話取材に停戦合意の実効性を疑う住民や、行き場がなく途方に暮れる住民もいる。
首都ベイルートに家族で避難していたファタマ・ハサンさん(17)は停戦が発効した11月27日、5か月ぶりに地中海に面した南部アドルーンに帰った。
多くの建物が破壊される中、自宅は無事だった。母が焼くクッキーの匂いに「自宅の温かさを思い出した」。だが、30日には「ボーン」という爆発音が響き、親戚の住む北部の集落アイン・アクリーンに向かった。ハサンさんは「日常がまた奪われた」と憤った。
家族で避難先を転々としてきたラスレン・マーティさん(58)は30日に南部の集落クレイアに戻った。自宅は戦闘でがれきとなっていたが、「残骸に触れ、自分の土地だと確認したかった」という。
だが、停戦監視を担うため集落に入ったレバノン軍からは「安全を確保できないので集落を離れるように」と勧告された。マーティさんは「軍には停戦を守らせる力がない」とこぼした。
自宅跡を荒らされないようとどまりたいが、爆撃音が近くで聞こえ今月2日に再び集落を離れた。「行く当てもなく、どうすればいいか分からない」と嘆いた。