「3日間飲まず食わず」の拷問で「五感」が…イラン政府に独房拘禁された女性が告白した「非人道的な所業」
悪臭漂う独房生活
――他のタイプの独房を経験しましたか? はい。諜報局の隔離棟のあと、比較的大きい部屋に移されました。部屋の隅に、毛布がマットレス代わりに敷かれていました。それとは別に、クリーム色の毛布が床に置いてありました。ドアで仕切られた向こうにはトイレがあり、シャワーがついていました。そのせいでやっぱり独房には耐え難い悪臭が漂っていました。 最初に私がしたことは、ドアと壁を洗うことでした。残念ながら強い悪臭は消えませんでしたが。天井のすぐ下の壁に小さな窓があり、室内を薄暗く照らしていました。 背の届くところに窓はなく、独房のなかはとても暗かったのですが、夜明けになると小鳥のさえずりが聞こえて嬉しくなりました。その声は私にとって生命の証でした。最初の3日間、移動させられる時間帯のせいで昼食も夕食も食べられませんでした。ある夜、やっとの思いで隔離房の最後のベッドにたどり着くと、干からびたパンがひと切れ、天井の配管のそばに置いてありました。 私はあまりに空腹だったのでパンを手に、一瞬まじまじと見つめましたが、横になって食べました。少しだけ気分が良くなりました。それは寒い夜のことで、体の震えが止まりませんでした。ついに、重たい絨毯の端を自分にかけることを思い立って、引っ張り上げようとしました。そのとき、寒いのは自分の頭のすぐ横から冷たい風が吹いてくるからだと気づきました。天井下の小窓です。どうにもなりませんでした。凍え死ぬかと思いました。
深刻な身体的、精神的ダメージ
――独房にいるのはどんな感じでしたか? 独房は単に窮屈で、暗い、生命のない空間だというだけではありません。この期間、囚人へのプレッシャーはどんどん強くなっていきます。重苦しく厳しい尋問、脅し、侮辱、家族や友人へ危険が及ぶのではないかという心配、家族の近況を知ることができないこと、自分や家族や同胞の身に何が起きるのか分からないこと、それらが一気にのしかかってくるのです。 ひとつひとつの質問の答えが、運命を決するかもしれません。また尋問官は常にホラを吹き、悪態をつき、大声を出し、嘘をつきます。囚人を弱らせて従順にさせるための方法です。 独房拘禁が長引くと、身体的、精神的ダメージは深刻です。孤立は人の感覚を鈍らせ、心のバランスを狂わせます。先の見通しを立てることができなくなります。これは、思考回路が支離滅裂で途切れがちになることと、光や色、音、いい匂い、触覚、ただ普通の視線を浴びる、といった感覚が遮断されることと関係があります。 そしてひどい食習慣のせいで眠れなくなり、不眠症や体重減少を招きます。私は最初の数ヵ月で20キロ痩せました。 翻訳:星薫子 『尋問官が相次いで口にする「息子の不幸」「夫の入院」…明らかなウソでも「信じてしまう」イラン独房の異常な実態』へ続く
ナルゲス・モハンマディ(イラン・イスラム共和国の人権活動家・ノーベル平和賞受賞者)