コロナ危機で離島の焼酎蔵が結束 「東京島酒」を世界へ広げ始めた3代目
島内の売り上げがゼロに
営業や社内改革が順調に進んでいた2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大で八丈興発も大打撃を受けました。「島内の得意先だったスナックが長い間店を開けられず、売り上げがほぼゼロになりました」 危機的状況でも、売り上げを下支えしたのが島外の地酒専門店でした。八丈興発の焼酎は一升瓶で2千円前後と手ごろで、家飲み需要のほか、レストランからの引き合いも多く、2020年の売り上げは1億3千万円で踏みとどまりました。 「このタイミングで父と代表交代の話を進めました。それまでも私がほぼ運営していましたが、経営は父が見ていました。しかし、このままでは設備投資などもできないため、父を説得しました」 2020年に小宮山さんは共同代表となり、2022年には代表取締役に就任しました。
コロナ禍を機に動いた地理的表示
コロナ禍は、伊豆諸島の酒蔵の意識も大きく変えました。業界団体の東京七島酒造組合はありましたが、それまでは連携を取る機会が少なかったといいます。しかし、コロナ禍という共通の危機が生じたことで協力の機運が生まれました。 そんななかで動き出したのが、地理的表示(GI)保護制度の指定でした。 GI保護制度は地域制が強く優れた産品を知的財産として保護することで、国内外への競争力を高める制度です。認定に厳格な基準を設けてブランド力を強化します。食品では特産松阪牛や夕張メロンなどが有名で、お酒では琉球泡盛や薩摩焼酎などが指定されています。 小宮山さんによると、2021年に日本酒造組合中央会の担当者が海外向けにお酒のPR動画を制作するために来島した際、GI指定の話が持ち上がったといいます。中央会からは東京国税局の担当者も紹介されました。 組合では当初、指定は難しいと認識しており、応募する予定はなかったといいます。小宮山さんは「GI指定は組合の加盟蔵の一つでも反対があれば前に進みません。コロナ前は蔵の連携が少なかったため、全ての蔵が同じ方向に向くのは難しいと思っていました」と振り返ります。