響く風車の野太い重低音 進む風力発電で道北は〝陣取り合戦〟激化、環境への影響懸念も
同社の諏訪部哲也社長は産経新聞の取材に「地元住民などがいろいろと懸念を持っていることは承知している。丁寧な対話と調査結果を地域住民に開示して理解を求めながら必要な見直しを進めていきたい」と話している。
■地域住民と共存を
5月下旬に稚内市の丘陵地で執り行われた樺岡WFの竣工式。立地自治体を代表して出席していた工藤広市長は「開発か、保全かという二者択一を地方行政が担っているわけではない。地域の優位性をいかして脱炭素に貢献するという一点で事業者と協力してきた」と実績を強調する。
風況が良いという評価がある一方、自然環境への影響や送電環境の脆弱(ぜいじゃく)さなどの課題も挙げて「長い時間をかけて一つずつ解決し、地域住民との共存を念頭に事業展開をしている。今までもこれからも変わらないし、次の世代にもつなげていく」と意欲を見せた。
同市に寄せられた風発関連の市民相談件数は令和4年度、5年度ともに1件。土地問題や騒音関連に関する内容だが「事業者側に伝えてすべて解決済み」(担当者)。6年度は5月末現在1件で現在対応中。事業者に寄せられる相談件数は「必要があるなら確認するが、対応していると聞いており問題ない」とのスタンスだ。
ユーラスHDに問い合わせると騒音などの相談はあるが、件数は非公表。相談者には個別対応で解決につなげているといい、「地域住民や自然保護団体、知事の意見書などを反映したものを経産省が勧告として出しており、その内容に沿って対応している」(広報担当者)。今後は地域住民に対する説明会の機会を増やすことも検討する考えを示している。
現地を歩くと、風発が日常生活に影響しているという話を複数聞いた。設置を推進する地元の雰囲気が強く、「流れに逆らうような意見は出しにくい」との声もあった。意識して拾い上げなければ潜在化しかねない懸念をはらんでいる。
温暖化対策に効果があり、需要が増える都市部に電力を供給し、地域には税収増や雇用創出などの効果が期待されている風力発電。その工事が進む稚内市の丘に立ちながら、より丁寧な対話が進むことを強く願った。(坂本隆浩)